北米

2026.06.09 14:00

スペースXのIPOで笑うのは本社移転したテキサス州ではなく、元拠点のカリフォルニア?

Michael Yanow/NurPhoto via Getty Images

Michael Yanow/NurPhoto via Getty Images

スペースXは、米国時間6月12日に予定されている新規株式公開(IPO)で約1兆8000億ドル(約288兆円。1ドル=160円換算)以上の評価額を目指している。そして、このIPOはカリフォルニア州の税収を大きく押し上げる見通しだ。というのも、同州に住む何千人もの従業員がIPOによって新たに富裕層の仲間入りをし、いわゆる「億万長者税」の課税対象になるからである。一方で、テキサス州は個人所得に対して一切課税していない。

テキサスへ移ったマスク、IPOの恩恵はカリフォルニアへ

イーロン・マスクは、カリフォルニア州の税制や政治、ビジネス環境を長年にわたって非難し続けた末に、同州からの離脱を大々的に宣言し、スペースXの本社をテキサス州へと移転した。しかし今、彼のキャリア人生の中でも最大のイベントが、そのカリフォルニア州に巨額の税収という恩恵をもたらそうとしている。

これこそが、スペースXのIPOがもたらす皮肉な結末である。同社はテキサス州に拠点を移したものの、まもなく富裕層となる何千人もの従業員までは移動しなかったからだ。彼らは今もロサンゼルス周辺に住んでおり、カリフォルニア州のいわゆる「億万長者税」に直面することになる。一方で、個人所得に課税しないテキサス州がその恩恵にあずかることはない。

スペースXは1株あたり135ドルで5億5560万株を売り出す準備を進めており、評価額約1兆7700億ドル(約283.2兆円)で約750億ドル(約12兆円)の調達を目指している。投資家にとっては火星を撃ち落とすような壮大なものに映るこのIPOも、カリフォルニア州にとっては、それよりもはるかに現実的なもの、すなわちロサンゼルス郡に舞い降りる課税対象所得を意味している。

本社はテキサス、従業員7661人はカリフォルニア

IPOを行う際の開示書類「Form S-1」によれば、現在テキス州ボカチカに本社を置くスペースXは、AI企業のxAIやソーシャルメディアのXの従業員を含め、世界中で2万2000人以上を雇用している。「再利用可能なロケットや宇宙船の設計・製造」を行うカリフォルニア州ホーソーンの旧本社で現在何人が働いているかは不明だが、ロサンゼルス郊外にあるホーソーン市が昨年6月に開示した年次報告書では、その数は7661人とされている。スペースXはまた、カリフォルニアの従業員が利用できるロサンゼルスとテキサス間の社内航空路線を運行し、多くの従業員がカリフォルニア州に住み続けられる仕組みを整えている。

サンタモニカを拠点とする投資会社ガーバー・カワサキのCEOであり、現職か否かを問わず多くのスペースX従業員を顧客に抱えるロス・ガーバーは、「(スペースXの)IPOにより、カリフォルニアは沸き立つだろう。同州の経済と税収は一気に押し上げられる」と語る。「カリフォルニア州の予算は、富裕層のキャピタルゲイン(譲渡益)によって100%賄われている。そういう仕組みなのだ」。

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翻訳=江津拓哉

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