AI企業のIPOラッシュに公開市場が下す評価
上場申請書類がAI企業の実態を明らかにし、市場はその数値にどれだけの価値があるかを判断することになる。
スペースXは1兆7500億ドル(約280兆円)の評価額で最大750億ドル(約12兆円)の調達を目指している。しかし、モーニングスターが算出した同社の適正価値は約7800億ドル(約125兆円)と、希望額の半分にも満たない。この乖離は、プライベートマーケットにおける評価への確信と、公開市場における規律との間に大きな隔たりがあることを示している。評価額をめぐる議論はさておき、750億ドルの調達が実現すれば、2019年にサウジアラムコが記録した256億ドル(約4兆1000億円)という史上最大のIPOの約3倍に相当する。
OpenAIとアンソロピックは、IPOに際してそれぞれ異なる課題に直面することになる。OpenAIの強みはブランド力、消費者へのリーチ、そして強固な開発者エコシステムだ。一方で、莫大な資金消費と巨額のインフラ投資負担が存在する。対するアンソロピックは、より明確な収益成長のストーリーを持ち、黒字化の達成も比較的早いとみられている。ただし、顧客との契約はまだ初期段階にあり、米国政府との訴訟リスクも抱えている。公開市場の投資家が注視するのは、これらの企業が生み出す収益のうちどれだけが実際に手元に残り、どれだけがチップメーカーやクラウド事業者に流出しているのか、そして成長が巨額のインフラ投資負担を上回ることができるのかという点だ。
プライベートマーケットが織り込んできたのは将来性に過ぎず、IPOはその実態を評価する局面となる。IPOの環境は整いつつある。2026年第1四半期の新規株式公開は22件に達し、調達総額は94億ドル(約1兆5000億円)を超えた。第1四半期としては過去5年間で最も好調な滑り出しとなっている。
AI企業によるIPO第一号が米国市場に示すもの
AI企業のIPO第1号がどのような評価を受けるかは、その後に続く同業各社の基準となる。アンソロピックは2026年6月1日、OpenAIに先駆けて秘密裏に上場申請を行った。先行する同社の市場での評価は、その後に続くIPOの価格形成の目安となるだろう。だが、IPO市場の活況が必ずしも市場の健全性を意味するわけではない。2021年には1000社超が上場し、合計で約1350億ドル(約21兆6000億円)を調達したが、その後多くの銘柄が公開価格を下回って推移した。


