海外

2026.06.13 15:00

AI企業上場ラッシュで暴かれる、160兆円評価と巨額赤字の真実

stock.adobe.com

こうした動きの背景にあるのは、巨額の資本コストをインフラ投資ビークルや長期リース契約などの枠組みに移し替えることで、営業損失として業績に直接響くのを避けるという論理だ。しかし、その結果として負債の実態が外部から把握しづらくなるというリスクが潜んでいる。

advertisement

IPO申請書類が浮き彫りにするAI企業の真価

IPOでは、米証券取引委員会(SEC)に登録届出書「S-1」の提出が求められる。この書類には、未公開企業としての資金調達では公に説明を求められなかったデータが示されることになる。中でも最初の試金石となるのが、収益の質だ。OpenAIの2025年の売上高ランレート(年換算売上高)は約200億ドル(約3兆2000億円)と、前年の60億ドル(約9600億円)から大幅に増加した。

一方、アンソロピックも、2025年末の約100億ドル(約1兆6000億円)から2026年5月には470億ドル(約7兆5200億円)へと急拡大している。こうしたアグレッシブな成長率が、公開市場の厳しい精査に耐えられるかという疑問が生じている。アンソロピックの収益構造は、通常投資家が好感するB2B中心である一方、開示された売上高が総受注額なのか、それともパートナーへの手数料や収益分配金を差し引いた純収益なのかが焦点となる。これに対し、B2C比重が大きいOpenAIは、より広範な課題に直面している。解約率の影響を受けやすい収益予測の妥当性に加え、現在のブームをどれだけ持続的な需要へと転換できるかという点が問われることになる。

2つ目のハードルとなるのが収益性だ。OpenAIは、2026年に140億ドル(約2兆2400億円)の赤字を見込んでおり、黒字化は2030年頃になる見通しだ。キャッシュフローもマイナスとなっている。調査会社ピッチブックのアナリスト、ハリソン・ロルフェスは、OpenAIが第1四半期に1ドルの売上を生み出すのに2.22ドルを費やしたことを指摘する。彼は、同社の売上高は本物だが、「経済性は破綻している」と主張する。

advertisement

対照的に、アンソロピックは2020年末までにはフリーキャッシュフローがプラスに転じる見通しで、現状の粗利率も約70%と、成熟したソフトウェア企業の水準に近づいている。公開市場の投資家が見極めようとしているのは、こうした経済性の改善がソフトウェア企業並みの収益性へとつながる道筋を示しているのか、それとも依然として実態が掴みにくく、比較も困難な発展途上のビジネスモデルに過ぎないのかという点だ。

最後に投資家が見極めなければならないのが、将来にわたる負担の実態だ。OpenAIはかつて、最大1.4兆ドル(約224兆円)に及ぶコンピューティング投資のコミットメントを公表したが、その後6000億ドル(約96兆円)へと縮小された。この数字が示しているのは、AI企業の成長ストーリーを従来のソフトウェア企業と同列には語れなくなっているという現実だ。その実態は、インフラ・ファイナンスの色彩を強めつつある。今後開示される申請書類では、将来の設備投資にどれだけの資金がすでにコミットされているのか、それらの契約にどの程度の柔軟性があるのか、そして最先端のAI開発競争にとどまり続けるために、どれだけの売上を確保し続けなければならないのかが明らかになるはずだ。

次ページ > 先行2社が占う市場の審判

編集=朝香実

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事