従業員が沈黙する理由
職場において最も危険な状況の1つは、問題が内々には広く認識されているにもかかわらず、公にはほとんど議論されない場合だ。経営陣はすでにその問題を知っているだろう、誰かがいずれ対処するだろう、懸念を示すと社会・政治的な不利益を被ると従業員は思い込むことがある。
ここで多元的無知が特に有害になる。他の人が黙っているのを見て現状を支持しているに違いないと誤って思い込む。実際には多くの従業員が内心では反対しながら、公の場では支持しているように振る舞っているのかもしれない。
発言する従業員への不当な扱い
懸念を示す従業員は必ずしも積極的に問題を解決する人として評価されるわけではない。職場文化によっては文句ばかり言う人、扱いにくい人物、進歩を妨げる存在といったレッテルを貼られる。そのように受け止められると、意欲の高い従業員でさえ率直なフィードバックを続ける意欲を失う可能性がある。
こうなると多くの組織にとって厄介な矛盾が生まれる。リーダーたちは往々にしてイノベーションや透明性、説明責任を重視すると口にする。だが従業員が欠陥を指摘したり非効率な慣行に異議を唱えたりすると、時に不利益を被る。やがて従業員は対立を招くリスクを冒すより調和を保つ方が安全だと学んでしまう。
従業員は自由に意見を言えている、と本気で信じていたリーダーたちに私はインタビューしたことがあるが、匿名アンケートや退職面談を通じて従業員たちは本音を話すことを恐れていたことがわかった。リーダーは沈黙を同意と勘違いすることがあるが、その沈黙は実際には恐怖や疲労、諦めを反映しているのかもしれない。
繰り返される失望が行き着く先
従業員は繰り返しエネルギーを注ぎ込んだアイデアがブラックホールに吸い込まれるように消えてしまうと落胆する。多くの組織は会議やアンケート、ブレインストーミング、提案の制度などを通じて従業員に絶えず意見を求めるが、共有したアイデアがその後どうなったのか従業員に伝えられることはほとんどない。
自分の意見が反映された行動がほとんど見られないと、従業員の参加意欲は低下し始める。人はその仕組みが本当に改善するためではなく体裁のためだけに存在していると感じると、自然と貢献する意欲を失う。多くの場合、従業員は「結局は何も変わらない」と学んだ経験から意見を言うことをやめてしまう。
これはイノベーションに大きな影響を及ぼす。最も優れた業務改善の洞察は顧客や制度、日々の業務上の問題に最も近い従業員から生まれる。従業員が把握していることを共有しなくなると、組織は非常に大きな価値を失うことになる。


