未来に資する金融モデルはいかに可能か
最初に着手すべき改革は、「モデルの責任」を義務づけることだ。繰り返しになるが、「このモデルによれば」と言うのをやめるべきだ。ここには「説明責任のギャップ」が生じている。モデルが間違っていたからといって、モデルを罰したり責任を問うたりできるだろうか。統計学者ジョージ・ボックスの有名な格言の通り「すべてのモデルは間違っている」のだから、その責任を組織または個人が明確に有するべきだ。
モデラーの負う責任とは、モデルの不確実性を理解し、適用限界を伝え、適切なユースケースを示すことだ。私は「責任あるモデリング」という研究テーマを掲げ、モデラーが自らの責任を理解し、引き受けるための倫理的義務について記述しようと努めている。
また「モデルの信頼」も重要である。私は別の場所でこう書いた。「専門家を信頼するためには、その人物が有能であるだけでなく、価値判断が自分と一致していなければならない」と。モデルへの信頼は、専門家ひいては科学全般への信頼と密接に結びついており、現在は政治的二極化のリスクに直面している。不完全なモデルによって未来が政治的に支配されるリスクと、未来を築く助けとなるはずのモデルが信頼を失うリスクだ。
モデルのユーザーはモデルの根底にある「価値判断」を分析することで、モデルが信頼に足るものかどうかをより直接的に判断できるようになる。モデルから得られた情報を効果的に活用することで、意思決定のプロセスを改善できるはずだ。
忘れてはならないのは、私たちは「モデルランド」から脱出しなければならないということだ。なぜなら、私たちが生きて、意思決定を下す場所はモデルランドではなく、単一で、無数の領域をもち、一筋縄ではモデルにできない「現実世界」なのだから。
エリカ・トンプソン◎ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの工学部・科学技術工学公共政策学科准教授。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのデータサイエンス研究所・客員上席研究員。数学・統計学的な問題点から信頼の形成、専門家の役割まで現実世界での意思決定を支援するための数理モデルの適切な活用についての研究を行う。


