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AIと数理モデルに依存する「モデルランド」ビジネスの盲点と予測不可能な未来への備え

金融市場でのモデルへの依存

金融セクターでは必要以上にモデルへの依存が進んでいる。金融モデルは、金融システムにおける「能動的な主体」だ。デリバティブ価格決定のためのブラック・ショールズ・モデルなどが発揮する「パフォーマティビティ」について、社会学者のドナルド・マッケンジーは「カメラではなくエンジンである」と見事に表現した。モデルは現実の断片を写し取るだけではなく、現実の結果を積極的に誘導しているということだ。もちろんカメラであっても、レンズの背後にはいつシャッターを切るかを選択する人間が存在する。ESGスコアや気候リスク指標、さらにはディスカウント・キャッシュフロー(DCF)やソルベンシー資本要件(SCR)のような一般的な金融モデルは、確実にビジネスや社会の未来を誘導している。

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金融市場では、企業価値評価の基礎となるレポーティングにおいて「数値化可能な価値」に偏重する傾向がある。これはESGに限った話ではなく、1株当たり利益(EPS)などの報告指標全般に見られる傾向であり、企業もそれらの数値を改善しようと努めている。しかし、市場価値とはモデルランドの尺度ではなく現実世界の尺度であり、市場に存在しうるあらゆる情報や期待が統合される。もちろんそこには情報の非対称性や遅れが存在することもある。例えば投資家が気候リスクの進展について十分に情報を得ていない場合、新しい情報が開示された瞬間に突然価格が再設定され、市場で急激な価格下落スパイラルに陥る可能性がある。

労働条件の改善や制度の強化といった「数値化できない価値」は、それが価値として認められ、可視化されて初めて市場にとって意味をもつ。ESGレポーティングが存在する主な理由はそこにある。こうした利益が投資家によって評価されれば、市場価格に影響を与え、モデルにとっても意味のある価値になる。これらがモデル上で考慮されないとすれば、それは投資家たちがそれらの価値に対して、本心では懐疑的であることの表れといえる。

気候リスク・モデリングの課題とは

サステナブル・ファイナンスは、品質がいくぶん不明瞭なモデリングツールに依存している分野だ。例えば保険業界は長きにわたりリスクプライシングの設定や資本管理に「CATモデル(災害予測モデル)」を使用してきた歴史があり、このモデルの長所と短所について経験的な理解を蓄積している。つまり、経験によって「モデルランド」から脱出し、現実世界についての有用な意思決定を行えるようになったということだ。

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他方で、気候リスク・モデリングの領域においては、信頼に値し、意思決定に資する品質基準が早急に求められている。この10年間で気候リスク情報や自然関連リスク情報のユーザーとプロバイダーは急増した。今や多くの金融機関や組織が気候リスクの評価と報告を求められており、それに伴いモデリングの分野には多くの新規参入者が現れている。そこは規制や品質基準のない自由な市場だが、同時に品質に関する直接的なフィードバックもほとんどない。なぜなら、気候情報は確率論的かつ長期的なものであり、気候情報の新たなユーザーたちは、競合するプロバイダーを比較するための内部チームやツールをもたないからだ。そのため、彼らはモデルランドから脱出する手段をもたず、結果として、サプライチェーンのリスク管理であれ、投資判断であれ、その他の用途であれ、提供された情報を信じるほかない。

この現状に対する手っ取り早い改善策は「気候情報について基本的な最低品質基準を策定すること」であり、それによって設計チームは、モデルが現実世界での意思決定に真に有用であるかどうかを検討できるようになる。

KEYWORD 02|「サステナブル・ファイナンス」
経済価値と多様な価値の両立を図る、現代金融の主要な潮流。環境・社会・ガバナンスの視点を投融資の判断に組み込む「ESG投資」や、社会へのポジティブな変化を明確に意図し設計する「インパクト投資」などがある。未だ黎明期にあり、国際基準の確立や、多様な価値をいかに適正に評価するかが課題とされる。

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インタビュー、翻訳、構成=井村凪伯 イラストレーション=ローズ・ウォン

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