海藻の量産化を実現したシーベジタブルは、その技術を生かして失われた海の生態系の再生に挑む。海藻栽培から始まった同社の取り組みは、新たな産業づくりへと広がっている。 (Forbes JAPAN 2026年6月号 特集「カルチャープレナー特別版 「『源流経営』最前線」より)
「悲しむ人がいない、ゆがみがないビジネスをやろうと思ったら、自分たちで素材や原点にさかのぼる必要がある。お金によって得られる幸せの限界に気がつかざるをえないような時代だと思います」(友廣裕一 シーベジタブル共同代表 )
環境の変化に伴い、海藻の生産量は過去20年で半分以下にまで落ち込んだ。そんななか、すじ青のりをはじめとする海藻の陸上・海面での栽培技術を独自に開発し、海藻の量産体制を築いてきたのがシーベジタブルだ。
天然採取に依存していた海藻を「育てる」産業へと転換した彼らが今注力しているのは、これまでに培ってきた海藻栽培のノウハウや知見を活用して、各地で失われた海の生態系を復活させる取り組みだ。共同代表の友廣裕一らは、海藻の栽培からさらに上流へと踏み込み、海そのものを豊かにする新たなビジネスモデルへの転換を狙う。
「磯焼け海域でも、食害を受けにくい時期や手法を開発すれば育てられる。海藻が繁茂すると環境は一変します。食物連鎖の基盤が再生され、生態系全体が回復していくことが調査によって示されました」(友廣)
シーベジタブルは企業版ふるさと納税などを活用し、要請のあった自治体と連携。企業からの寄付を原資に実証実験を行い、その後は地元の漁業者が生業として継続できる体制へと移行させる。天然資源の減少に直面する漁業にとって、海藻栽培は安定的な収益源になりえる。
従来は海藻の販売が中心だったが、こうした企業や自治体からの委託による実証実験や受託案件が増え、種苗の供給やノウハウ提供での収益も広がり始めている。これにより、シーベジタブル単独では成しえないスピードで、「豊かな海」を日本全国に広げることが可能になる見込みだ。
「まだ実証実験の段階ですが、僕らが大事にしたいのは、おいしい海藻を食べ続けられて地域に生業が生まれ、しかも生態系も回復していくという、みんなが幸せになる循環をつくることです」(友廣)
シーベジタブル◎2016年、高知県で創業。天然採取のみだった海藻を陸上・海面栽培により量産化。海藻の販売にとどまらず、全国の自治体に種苗や栽培を提供し、地域における新たなビジネスモデルの開発を目指す。



