人類の誕生以前からインターネット時代までのリーダー像を描いた『リーダーシップ進化論』。著者の酒井穣が、AI時代におけるその進化の行方を提示する。
AIが進化する今、あるべきリーダーシップのヒントは「データドリブン・リーダーシップ」というものにある。その理由は、ホモサピエンスがなぜ絶滅せずに生存してきたかという人類史が証明しているからだ。では、その「データドリブン・リーダーシップ」とは何か。「人類とリーダーシップ」という巨視的な観点から、人類史とともに紐解いてみよう。
人工知能の台頭は宇宙レベルで普遍的
地球に限らず、宇宙全体における生命の起源、進化、分布を研究する学問分野を、特に宇宙生物学という。この宇宙には138億年の歴史があり、これだけの時間があれば、地球ではないほかの惑星においても、人間のような知的生命体が登場することもあるだろう。
そうした知的生命体の進化は、絶滅を免れていれば、似たような未来にたどり着きそうだ。それは「知的生命体が、自分たちより賢い人工知能をつくる」という着地だ。
どこの宇宙であっても、知的生命体が進化する速度よりも、技術的な進化の速度の方が速い。いずれは人工知能が台頭し、社会変化が加速する。その向かう先は「非合理の徹底的な排除」であり、実にリーダーシップは段階的にそれを実現してきた。
私たち人類は、700万年の歴史を通して社会的進化を遂げ、リーダーシップもまた、それぞれの時代環境において合理性を追求する形で進化してきた。例えば古代の「家族型リーダーシップ」は血縁や地縁に近い強い結びつきを基盤とし、リーダーは保護者のような役割を担った。旧石器時代以降発達した「学習型リーダーシップ」は学びを促し、試行錯誤を支える存在へと変化した。農耕社会の「順位型リーダーシップ」は、明確な序列や役割が組織運営の軸となった。後の「専門型リーダーシップ」は、知識や技能など専門性が源泉に。やがて、ルネサンス以降現れた「扇動型リーダーシップ」は、人々の感情や価値観に働きかけた。そしてインターネット以降の「周辺型リーダーシップ」では、中心からの統制ではなく、周縁からの提案と参加によって組織を動かした。リーダーは前面に立つのではなく、場を整え、関係性をつなぐことで自発的な協働を引き出していった。
このように、リーダーシップの進化は、段階的に社会から非合理を排除してきたのである。
唯一の生存戦略は、試行回数
そして人類もついに自分たちの能力を大きく上回る人工知能を生み出した。2025年時点で、理論的には最大40%の仕事は自動化が、また労働時間は最大57%の削減が可能だという。すぐにこの理論値に達することはないが、これからも非合理の徹底的な排除は止まらない。
この環境下、次に何が来るかを予想することは難しい。だから、唯一の生存戦略は、小さな実験の試行回数を稼ぐこと。要するに「未来の正確な予測は不可能」という知的前提に立ち分散投資を実行する。自然淘汰を前提とした、ビジネスモデルの多様性を確保する必要があるためだ。



