僅かな差異が競争優位性に
4万年前に絶滅したネアンデルタール人と私たちホモサピエンスは、遺伝子の99.5%までもが一致しているのをご存知だろうか。その類似性によりホモサピエンスとの交配もあり、私たちの遺伝子の1~4%はネアンデルタール人由来とされる。ほとんど変わらない二者でありながら、ほんの僅かにあった「差異」が、実は絶滅と繁栄を分けたと言える。この差異こそが、生存と繁栄を続ける上での鍵だ。
では、この差異の重要性を現代に当てはめてみよう。人工知能を日常的に用いていれば明らかな通り、抽象度が高く、最大公約数(共通する一般論)に注目するような情報の価値は急速に低下している。逆に、人工知能が把握していないデータ、すなわち現場における僅かな差異、統計的事実(平均的な傾向)からの「ばらつき」に関する情報だけが、価値あるものとして強調されつつある。
一般論に終始するコンサルティングや、マニュアルが更新されないような仕事のあり方は、大きな淘汰圧の下にあるといわれる所以だ。だからこそ、このAI時代、一般性ではなく「ばらつき」、つまり、多様性への注目が必要なのだ。
マネジメントの具体的な例を挙げるなら、組織全体の傾向だけではなく、部署単位、個人単位でのパフォーマンスの決定要因を知る必要がある。昇進・昇格につながる「ホットジョブ」への登用人材要件も、独自データに基づいて明確にすべきだ。それが、組織や企業の生死を分けることになるからである。
私が経営する企業のダイバーシティ推進や人材育成を生業とする「チェンジウェーブグループ」で用いる独自のデータ、すなわち「上司の言動」×「自分自身の状態」(やりがい/成長実感/挑戦意欲等)の相関分析のような結果を、組織レベル、部署レベル、個人レベルで把握し、データドリブンなリーダーシップを進める必要がある。
小さな実験の試行回数を
科学技術の加速度的な進化は、予測誤差はあるものの、それ自体は止まらない。社会環境も、急速に変化していく。ビジネスモデルはもちろん、誰もが変化しなければならない。
ただし、どのような変化が正しいのかは、変化してみないとわからない。正誤を判断できるのは市場だけだ。だからこそ、正解を知らないという前提に立った「小さな実験の試行回数」こそが、最重要のKPIになるだろう。そして、小さな実験結果によって得られる独自データに依存した意思決定だけが、競争優位の源泉となっていく。
データドリブン・リーダーシップの時代は、すでに幕を開けている。
酒井 穣◎慶應義塾大学理工学部卒、Tilburg大学 MBA首席。商社を経てオランダの精密機器メーカーへ転身。帰国後フリービット取締役を経て、2016年リクシスを創業。著書に『リーダーシップ進化論』など多数。毎年100社超で研修・コンサルティングを担当。


