慢性的なストレスは、現代社会における重要な健康課題の一つである。日々の仕事や生活の中で生じるプレッシャーは脳内の情動制御機構に影響を与え、意欲や生活の質の低下を招く要因となる。現在、こうした不調に対してはモノアミン神経系を標的とした治療薬などが用いられているが、十分な効果が得られない場合や副作用といった課題も指摘されており、従来とは異なるアプローチによる新たな機能性成分の探索が求められていた。
こうした中、明治大学の金子賢太朗准教授らの研究グループは、運動時に体内で産生され、パルメザンチーズや醤油などの発酵食品にも含まれる代謝産物「乳酸フェニルアラニン」に着目した。これまでは運動による食欲抑制や代謝調節との関連が報告されていた成分だが、脳機能や情動行動への影響についてはほとんど明らかになっていなかった。
研究グループがマウスを用いて検証を行ったところ、代表的な情動行動の試験系である高架式十字迷路試験などにおいて、乳酸フェニルアラニンを投与されたマウスは、通常であれば警戒して避けるエリアでの滞在時間や滞在頻度が増加し、明確な抗不安様作用(ストレス緩和作用)が認められた。興味深いことに、乳酸やフェニルアラニンをそれぞれ単独で、あるいは単純に混合して投与した場合にはこのような作用は見られず、両者が結合した「乳酸フェニルアラニン」の状態であることが重要だという。




