アーミッシュがAIを使う? それは、風刺コメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ』のコントのネタのように聞こえるかもしれない。だが、そうではない。そしてそこには、ビジネスコミュニケーションを担うすべての人にとっての教訓がある。
アーミッシュとは何者か
私がインディアナ州北部に住んでいた頃、アーミッシュが多く暮らす近郊の農村地帯を車でよく通った。彼らは主にスイス系ドイツ人の血を引くキリスト教徒の集団で、質素な暮らしを好み、テクノロジーを避け、ここ1世紀ほどほとんど変わらない伝統に従う傾向がある。農家には電線が引かれておらず、ウォルマートには馬車をつなぐための柵がある。そんな風景を見れば、そこがアーミッシュの土地だと分かった。
たくましい農夫が数頭の馬を並べて畑を耕しているのを車窓から見た記憶がある。金色の朝日が差し込む情景は、1世紀前の映画の一場面のようだった。私は、彼とその子孫がこの暮らしをどれほど長く維持できるのだろうかと考えた。
実際、アーミッシュの生活はさまざまな面で変わってきた。いまではほとんどの人々が小さなビジネスを営むか、他者のもとで働いて収入を得ている。農業も続いてはいるが、主な職業というより副業的な位置づけになっている。所属する教会のルールにもよるが、家庭用電力としての太陽光発電や「スマートではない」携帯電話など、一定の技術が許容されるようになった。ただし、テレビや自動車はいまも一般的ではない。
アーミッシュは「バイブコーダー」なのか?
アーミッシュは起業家気質が強い。かつては農産物や木工といった伝統的な技能に根ざした事業が中心だったが、いまでは製造業などの多様な事業が一般的だ。現代においてインターネット環境なしに事業を継続するのはほぼ不可能であるため、有害なコンテンツをフィルタリングした上でインターネット接続を提供するサービスも存在する。
私はそうした事情をある程度知っていたが、ライフスタイル誌『ニューヨーク・マガジン』の記事を読んで驚かされた。テレビとクルマを禁じながらも、ビジネスにおいてはAIに全面的に踏み込んでいる分派があるというのだ。記事には、家族経営のある製造業を中心に描かれていた。息子の一人は、ChatGPTを使って営業・財務・生産のダッシュボードやトラッキングシステムを作っていると説明する。高価な商用ソフトを買う代わりに、彼らはその大半を「バイブコーディング」(詳細なコードを書かずにAIに指示を出して雰囲気で開発する手法)で形にしたという。彼のいとこはChatGPTにレンタル購入契約書の草案を書かせ、弁護士が修正なしで承認した。



