ではなぜウクライナにFPVクワッドコプターが登場したのか? それがそこにあったから、というのが答えになる。2022年2月にロシアの全面侵攻が始まると、小規模ながら重要な役割を果たすことになる、筋金入りのFPVレーシングドローン愛好家グループが前線に身を置くことになった。
FPVドローンの製作方法にも操縦方法にも精通していた彼らは、中国DJI製「Mavic(マビック)」型のクワッドコプターが偵察や手榴弾・擲弾の投下に使われているのを見て、自分たちならもっとうまく活用できると考えた。2022年夏にはすでに、彼らはFPVレーシングドローンに爆弾を取り付け、格安の誘導ミサイルとして使用するようになっていた。ほどなくして、それらは戦車を撃破するようになった。
#Ukraine: The 93rd Brigade of Ukraine showed the use of a very interesting cheap commercial drone converted to kamikaze role. Such drones carry a very small payload and are used mostly against personnel.
— Polymarket Intel (@PolymarketIntel) July 29, 2022
Note that the operator is receiving video output via special FPV goggles. pic.twitter.com/j06zU6nZk4
ウクライナ軍の指揮官たちは、戦術攻撃ドローンはこのような「おもちゃ」のようなものではなく、もっと大型で、より重い弾頭を搭載し、もっと射程の長いものでなくてはならないと主張していた。しかし、FPVドローンを飛ばしていた現場の操縦士たちは、これがどういうものかを理解していた。彼らは自分たちでドローンを購入したり製作したり、あるいはステルネンコのような資金調達者から入手したりしていたので、上層部の支援を必要としなかった。
1機500ドル(約7万9000円)以下のFPVドローンはやがて、ウクライナ軍にとって第一の「戦車キラー」になる。ロシア兵たちも模倣し、同様にFPVドローンを飛ばし出した。彼らの指揮官たちもまた、こうした未承認で非標準の兵器の使用に強い不快感を示していた。しかし最終的には、双方とも公式なルートでFPVドローンを供給するようになる。
射程の制約
これら初期のFPVドローンに対しては、せいぜい3~5kmという短い距離しか飛べないではないかという批判がすぐに上がった(それでも、名高い米国製FGM-148ジャベリン対戦車ミサイルの射程2.5kmより長いのだが)。
飛行距離・射程を制約していたのは、制御信号が届く範囲とバッテリー駆動時間だった。いずれもその後改良された。なかでも、「空飛ぶ中継局」となるリピータードローンの投入や、大容量のリチウムポリマー電池の採用が大きかった。
FPVドローンはほどなくして10~20kmの戦術射程に達した。2023年10月には、ウクライナ軍のある操縦士が22km先のロシア軍戦車にドローンを命中させ、当時の最長記録を更新している。ロシア軍は戦車などの装甲車両を前線から十分離れたところにまで引き下げ、突撃のために必要な際にのみ前方へ展開させるように運用方法の変更を強いられた。


