経営・戦略

2026.06.08 09:30

6月12日に迫るスペースXによる史上最大のIPO 投資家需要は早くも目標額の2倍に到達

(c)SpaceX

また、スペースXが3日に提出した改正目論見書には、投資家に対するリスク要因として、「将来の取引(M&A)にともない、新株を大量に発行する可能性がある」という一文がひっそりと追加されていた。これがテスラを買収するための資金であれば、マスク氏のグループ企業はブロードコムの時価総額も超えるだろう。2027年までには実施されると噂されるこの巨大合併は、スペースXが自社株式を大量に新規発行し、テスラの株主が持つ株式と交換することで進められるはずだ。

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アンソロピック、グーグルとの巨額契約

6月4日に開始されたロードショー(投資家への説明会)では、スペースXのCFO(最高財務責任者)、ブレット・ジョンセン氏によるプレゼンテーション動画が公開されるとともに、新たに解説された特設サイトに関連資料が掲示された。

スペースXのIPOの特設サイトでは、CFOブレット・ジョンセン氏による約17分間のプレゼン動画が視聴可能 (c)SpaceX
スペースXのIPOの特設サイトでは、CFOブレット・ジョンセン氏による約17分間のプレゼン動画が視聴可能 (c)SpaceX

そこではスペースXの功績が列挙されるとともに、売り出し株式の最大30%を個人投資家に割り当てる方針が改めて説明された。一般的な大型IPOでは機関投資家が買い手の中心となる。しかし、今回はスペースXファンを重視した異例の戦略が取られた。同時にこれは上場直後の大量売却や空売りを防ぐための防衛策にもなる。

ジョンセン氏は、アンソロピックおよびカーソルと締結した契約について言及し、スペースXのAI事業が順風満帆であることをアピールした。スペースXが保有する「コロッサス1」の全計算能力(300メガワット分)を、アンソロピック社が独占的に利用するというこの契約によって、同社は毎月12億5000万ドル(約2000億円)という巨額使用料をスペースXに支払う。自動プログラミングの最先端アプリを開発するカーソル社とは、2026年後半までに同社を600億ドル(約9兆6000億円)で買収するオプション契約を締結。これによってスペースXは、時価総額1兆7500億ドルの正当性を強化した。

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電算インフラにおける収益化のプランを示したプレゼン資料。アンソロピックによる12億5000万ドル(約1900億円)の使用料のほか、企業向けのGrok APIの提供、潜在的な株式価値であるカーソル社の買収オプション600億ドルなどを明記 (c)SpaceX
電算インフラにおける収益化のプランを示したプレゼン資料。アンソロピックによる12億5000万ドル(約1900億円)の使用料のほか、企業向けのGrok APIの提供、潜在的な株式価値であるカーソル社の買収オプション600億ドルなどを明記 (c)SpaceX

6月6日には、スペースX株に対する投資家の需要が約1500億ドル(約24兆円)に達したと報じられた。つまりこれは、スペースXの目標調達額の2倍に達したことを意味する。これによって8333万株の追加オプション(追加売出)が行使されることが確実視されており、その結果、スペースXの調達額は最大860億ドル(約13兆7600億円)に達すると見込まれる。

同日、スペースXはさらに目論見書を更新し、グーグルとの巨大契約を初めて公表した。この契約によってグーグルは、スペースXのデータセンターの使用料として月9億2000万ドル(約1470億円)を支払う。期間は今年10月から2029年6月までの約2年9カ月間。その総額は約320億ドル(約5兆1200億円)とされる。

グーグルとアンソロピックとの年間約260億4000万ドル(約4兆1700億円)におよぶ巨額契約によって、スペースXは超巨大AIインフラ企業という新たなポジションを確立することになる。これによって100倍前後とされてきた同社のPSR(株価売上高倍率:時価総額÷年間売上高)が40倍以下の適正水準まで引き下げられ、今回のIPOにおける株価や時価総額の妥当性を、投資家に対して強力にアピールすることになる。

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スペースXのIPO、個人投資家も参加可能──投資方法とリスクを解説

編集=安井克至

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