同年12月にはセカンダリー・マーケット(二次流通市場)において、その額は約8000億ドル(1株421ドル)まで上昇。さらに今年2月には、マスク氏が創設したAI企業「xAI」(時価総額2500億ドル)との合併によって、その額は約1兆2500億ドル(1株526ドル)に達している。
xAIとの合併直後、上場を見据えるスペースXは、1株を5株にする「株式分割」を実施し、1株526ドルだった株価は5分の1(105ドル)へと調整された。そして今回の上場や、xAIとの成長シナジーにともなうプレミアム(上乗せ価値)を見込んだスペースXは、自社の株価を自ら1株135ドルに設定したうえで、今回のIPOに臨もうとしている。
引受銀行を翻弄する型破りなIPO
一般的にIPO時の売り出し価格は、引受銀行による一連の手続きによって決定される。投資家向けのロードショー(投資家に対する説明会)を開催して需要を探り、それを基に引受銀行が株価のレンジ(仮条件)を設定し、その範囲内で投資家から入札(ブックビルディング)を募ることで最終的な公開価格が決定される。
しかし、スペースXは6月3日にSEC(米国証券取引委員会)へ提出した改正目論見書(S-1/A)において、「1株あたり135ドルの価格を堅持する」と明記し、その意思を示した。つまり、仮条件やブックビルディングなどの通常行われる手続きをすべてキャンセルし、1株135ドルという価格をそのまま投資家と金融機関に提示したことになる。通常ではありえないこの決定は、目標調達額の達成を目指すスペースXの強い意思の表れと言える。
6月4日、米金融大手ゴールドマン・サックスは、スペースXのAI部門の売上高は2025年時点で32億ドル(約5120億円)であるものの、2030年には100倍の3220億ドルに急増するとの見通しを示し、注目された。たしかにスペースXが推進する通信衛星網スターリンクや、これから本格着手する軌道上データセンター構想のほか、同社が保有する世界最大級のAIデータセンター「コロッサス」(テネシー州)の運用においては、xAIとのシナジーが高い。
しかし、今回のIPOの引受金融機関として、莫大な手数料を受け取るゴールドマン・サックスが、不確定要素を多分に含む未来的なストーリーをもとにスペースXを評価したことに対して、一部から批判の声が挙がっている。ある意味においてこの喧伝キャンペーンは、株価を135ドルに固定されつつ、引き受けた新株を売り切る必要性に迫られた引受銀行の焦りともいえるだろう。
テスラ買収の可能性
今回のIPOがマスク氏の想定どおりに進めば、スペースXの時価総額はメタやテスラなどを抜いて米国第7位になる。今秋にはアンソロピックとOpenAIのIPOも予定され、どちらも1兆ドル(約160兆円)前後の大型IPOになる見込みだが、スペースXを超える可能性は低い。


