クアルコムの現在の取り組み
クアルコムは大規模なAI学習用プロセッサを争うのではなく、推論に注力している。推論はAIインフラ市場の中でも最大級のセクターになると見込まれている。
同社が最近投入したAI200およびAI250のサーバーシステムは推論向けに設計され、ピーク性能よりも容量を重視する。AI200はカード当たり768GBのメモリを搭載し、AMDのMI350X(288GB)やエヌビディアのB200クラス(GPU当たり約180GB)といった競合アクセラレーターを大きく上回る。これにより顧客は、より少ない台数で、より低消費電力のシステム上で大規模モデルを動作させることができ、総コストの低減につながる。
クアルコムは注目すべき顧客も獲得した。サウジアラビア政府のAIイニシアチブ「HUMAIN」との契約は、約10億ドル(約1600億円)相当、200MW規模の導入を伴う。
次の段階
クアルコムの志向はアクセラレーターにとどまらない。報道によれば、同社は最大80個のカスタムOryonコアを備えた独立したサーバーCPUを開発しているという。サーバープロセッサ市場への参入に成功すれば、データセンター支出に占める取り分を大きく拡大でき、より包括的なインフラ提供企業としての位置付けを得られる可能性がある。さらに、24億ドル(約3850億円)でのAlphawave Semi(アルファウェーブ・セミ)の買収は、同社のASIC設計および高速接続能力を強化し、大手クラウド事業者や企業顧客向けのカスタムシリコン・ソリューションを促進し得る。
投資の論点
現時点でデータセンター部門は小さい。サーバー販売は総売上高の2%未満にとどまり、個別に開示されるのではなく、汎用的なIoTカテゴリに含まれている。クアルコムはまた、インテル(INTC)やAMDとの激しい競争に直面しているほか、クラウド企業が自社チップを開発している状況もある。まさにこの現実こそが、投資家が動向を注視する理由である。
AIインフラは、半導体における支出機会として最大級の1つだ。主要テック企業は今年、合計で6000億ドル(約96兆2000億円)超を投じる見通しとなっている。サーバー、アクセラレーター、あるいはクラウド向けカスタムシリコンで小さな足場を築くだけでも、大きな新規収益源となり、確立されたスマートフォン分野への依存度を下げる可能性がある。
課題は実行力にある。確立されたサーバーメーカー、AIチップのリーダー企業、そして自社製チップを開発するハイパースケーラー(巨大IT企業)との競争が待ち受ける。しかし、省電力なAIインフラへの需要拡大は、クアルコムの中核的能力とよく噛み合う。問いは、クアルコムが一夜にしてデータセンターを支配するかどうかではない。効率性の優位を、急拡大するテクノロジー市場の1つで意味のあるシェアへと転換できるかどうかであり、成功すれば長期的な影響は小さくないだろう。


