ドコモが採用の屋内3Dマッピング技術「eeGeo」の実力

eeGeoのプラットフォーム上で表した建物の内部。(Image via eeGeo)


5年前、テレビゲーム業界のベテラン、イアン・ヘザーリントンは、ゲームと実世界を融合した新たなソフトウェア・プラットフォームを作りたいと考えた。

彼が3年をかけて作り上げたのは、地図データを3D画像に変換し、その中で自分のアバターを飛び回らせることができる、言わばヴァーチャルなGoogle Earthのようなプラットフォームだ。

ヘザーリントンは、これまでDMAとソニー・コンピュータエンタテインメントで要職を歴任し、「グランド・セフト・オート」のような名作を生み出してきた。ヘザーリントンが創業した会社、「eeGeo」は、TomTom 、NASA、Open Street Mapなどから地図データのライセンス供与を受け、これまでにアメリカ全土やカナダ、日本の3Dマップを作っている。

「我々はパートナー企業から地図データの提供を受けている。もし誰かが、全米で重要な木のデータを全て持っているとしたら、そのデータも活用したい」とヘザーリントンは話す。今後、地域を拡大していくに当たっては、ソーシャル・カーナビ「Waze」の様に、ユーザーに地図データを提供してもらうクラウドソーシングの仕組みを導入する予定だ。

eeGeoが開発した地図アプリ「Recce」は、アップルストアから無料でダウンロードでき、現在はロンドンとニューヨークの地図を提供している。しかし、屋外の地図は、HEREやTomTom、Googleなど競合がひしめいているため、ヘザーリントンが今後目指しているのは、建物の内部の地図の作製だ。ショッピングモールからスタジアムや企業の本社ビルまで、あらゆる建物の内部を3Dマッピングしてアプリで提供をすれば、人々はより正確に自分のいる位置を把握することができるようになる。

eeGeoが本拠を置くスコットランドのダンディーには、コンピュータ工学やゲーム開発の分野で優れたプログラムを提供している大学が多く、ゲーム開発業者も数多く存在する。現在、eeGeoで3Dマッピングとゲーム開発に携わっている社員の数は約30名だ。同社はこれまでに数千万ドルもの資金を数人の個人投資家から調達している。

ニッチな業界の外でeeGeoのことを知る者はまだ少ないが、同社には5年の歴史があり、この2年間は黒字化に成功している。

「もし我々がシリコンバレーを拠点にしていたら、2年前から積極的にメディア露出を図っていただろう。しかし、それは我々のスタイルではないんだ」

最近では、NTTドコモがeeGeoからライセンス供与を受け、ユーザーに対して3Dマップの提供を開始した。また、アメリカの保険会社3社が、従量制自動車保険の一部でeeGeoの地図を利用している。車載ドングルで車両の走行スピードをトラッキングしている場合、運転手は、eeGeoの地図を使って特定の道路を自分がどのように運転したかを鳥瞰図で再現することができる。見た目は、バーチャルな世界をゲームキャラクター風のアバターが動く形だ。

シスコもロンドン支社を訪れる顧客向けの地図として、eeGeoのプラットフォームを導入した。eeGeoの初期の顧客の中には、オフィス内を移動する社員を追跡する企業もいた。eeGeoのプラットフォームでは、スマートフォンなどの追跡可能なデバイスを地図上で監視することが可能だ。その場合、地図上を移動するのは点ではなくアバターだ。

eeGeoのプラットフォームを利用している企業は、温度分布図を地図に重ねることで、使われていない座席を把握し、無駄なスペースをなくすことができるようになると、同社で営業担当ディレクターを務めるジェレミー・コップは話す。

「インテリアのマッピングは、我々にとって非常に大きなビジネスチャンスだ。他社はどこも従来の2Dの地図に固執し、誰も我々のようなことはしていない。インテリアも3Dなのだから、インタラクティブにする必要があるんだ」とヘザーリントンは語る。

文=パーミー・オルソン(Forbes)/ 編集=上田裕資

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