グローバル展開においても、STTIは独自の戦略をとっている。「法律」や「安全規格」など必須の対応を除き、技術規格は世界共通に統一し、最小限のローカライズにとどめているのだ。「機能を盛り込みすぎず、課題解決のコア価値に徹底的にフォーカスし、無駄は削ぎ落とす。これにより、ソニー品質を維持したままクイックな市場投入が可能になる」のだと、伊藤氏はその戦略の意味を説いている。
オフィスの空調や作業環境を最適化する法人向けサービスへの挑戦
個人向けの「着るクーラー」として成功を収めたREON POCKETだが、STTIの挑戦はそれだけにとどまらない。最新のREON POCKETに搭載された「REON POCKET TAG」と呼ばれる小型センサーを活用し、法人向けのIoTクラウドサービス「REON BIZ」の展開を本格化させている。
REON BIZは屋内ファシリティや作業環境の温度を可視化し、快適性と省エネの両立を目指すサービスだ。オフィスの各所に設置されたTAGが温度や湿度をセンシングし、そのデータを元に空調設備を最適にマネージメントする。
「個人向けのウェアラブルデバイスの販売台数が増えることで、TAGの製造コストが下がり、法人向けのサービスにも活用できるようになりました。導入いただく企業のオフィスやファシリティなど、エネルギー消費の削減に大きく貢献できると期待しています」
個人向けプロダクトで培った技術と量産効果を、法人向けの社会課題解決ソリューションへと展開する。STTIが描く次なる成長戦略だ。
したたかな姿勢で社会課題を解決する
最後に、伊藤氏にスタートアップを成功させるための心得を聞いた。
「新規事業には、既存事業とは異なった目的が求められがちです。ところが、『既存と異なること』を見つけて形にすることだけが目的になっているケースも多く見受けられます。でも、それでは投資家に評価される数字をつくることが困難です。『新規』であることだけにこだわらず、社会的にも期待されている課題解決に挑むことが重要だと思います」
STTIもまた、ソニーという大きな企業において培われた既存のアセットを最大限に活用しながらも、スタートアップならではのアジャイルな経営手法で市場を切り拓いてきた。彼らの挑戦は、大企業発の新規事業がいかにして成功をつかむか、そのひとつの解を示していると言えるだろう。
連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
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