2〜3年目までは既存アセットを流用する形で丁寧に足場を築いてきたが、PRO Plusや6など最新のREON POCKETシリーズではバッテリーを除き、例えばベイパーチャンバーなどすべての基幹部品をカスタムメイドした。
事業開発の過程でソニーグループとはどのような関係を築いてきたのか。伊藤氏に聞くと、「本社は未来を見る投資家というより、過去を見る銀行と意識するようにしています」と、意外なほどにドライな答えが返ってきた。
「多くのスタートアップ経営者は、『未来のビジョン』を熱く語りがちです。しかし一般的に、すべての投資家がそこに必ずしも強い関心を持つわけではありません。経営の実績を示せていなければ、『なぜ赤字なのか』という説明に時間を費やすことになります。一方で、経営の数字が良ければ、投資家は自然と関心を示してくれる。つまりは数字を出すことこそが投資家を動かす最大の説得材料になります。この関係性は相手が銀行であっても、親会社であっても変わりません」
スピンアウトからグローバル展開。さらなる飛躍へ
2024年にSTTIはソニーグループからスピンアウトし、独立した企業として新たな一歩を踏み出した。その狙いは、さらなる事業の飛躍的成長にあった。
「開発・設計・生産・商物流のセットアップが完了し、収益の担保ができたため、さらなる成長フェーズへ移行する必要がありました。クラウドサービスの領域において外部との業務提携を容易にし、事業展開を加速させること。そして、巨大なグローバル本社の組織から独立性を担保することで、判断をさらに迅速化させることが目的でした」
現在、REON POCKETは世界20カ国以上で展開されている。異常気象による猛暑は、もはや日本に限らず世界共通の課題だ。その中でも、エアコンの普及率が比較的低い欧州では「着るクーラー」への関心が高まっている。
今年は新製品の「REON POCKET PRO Plus」を欧州で展開しているが、5月中旬の発売直後に、初期出荷分が瞬く間に完売した。背景には、本機が展開される欧州の複数の国々が強い熱波に見舞われ、5月としては異例の高温となったことがありそうだ。
STTIは欧州で2年前からREON POCKETシリーズを展開しているが、今年の売上はすでに当時の3倍以上に伸びているという。


