アンソロピックは2026年5月下旬、評価額9650億ドル(約155兆円)でシリーズHラウンドを650億ドル(約10兆4000億円)でクローズし、わずか2カ月前にOpenAIが記録した8520億ドル(約137兆円)を一気に追い抜いた。これら2大基盤モデル開発企業(AIラボ)は合わせて、2025年の世界ベンチャーキャピタル総額の14%を吸収している。
単一のテクノロジーカテゴリーがこれほどの世界の民間投資資本におけるシェアとインフラ層への熱狂を集めたのは、1990年代後半以来のことだ。当時、ノーテル・ネットワークスは北米インターネットバックボーントラフィックの75%を担い、時価総額は3660億ドル(約58兆7000億円)のピークに達した。2009年、同社は破産申請を行った。
この構造的な類似性は、インフラサイクルにおいて価値がどこに蓄積されるかについて警鐘を鳴らしているのかもしれない。基盤モデルへの資金調達は2026年第1四半期に2025年通年比で倍増し、資本はひと握りの研究所に集中する傾向を強めている。アンソロピックの収益軌道は真に前例のないものだ。同社は2026年4月初旬までに年間換算売上高300億ドル(約4兆8100億円)を突破した。2025年末時点では約90億ドル(約1兆4400億円)だった。セールスフォースがこの数字に到達するまでには20年を要した。しかし、インフラ層での収益成長は、そのインフラが可能にする価値を誰が獲得するかを決定するものではない。投資家たちは別の問いを織り込み始めている。
サンフランシスコを拠点とする象徴的なライター兼投資家のオム・マリクは先週、AIの現在を説明する正しい歴史的アナロジーはiPhoneの成熟局面でも、PCのクロックスピード競争でもないと論じた。それは高密度波長分割多重(DWDM)方式である。インターネットの容量を機能的に無限へと押し広げる一方で、同時に世間の会話から姿を消した光ネットワーク技術だ。DWDMは1990年代半ばに主としてノーテルとルーセントによって構築され、YouTube、ネットフリックス、Zoomを可能にしたが、それらから誰が利益を得るかを規定しなかった。
マリクが指摘するメカニズムは「技術(AIモデル機能)のコモディティ化」だ。スタンフォード大学の『AIインデックス・レポート2025』によると、トークン当たりの推論コストは2022年から2024年にかけて280分の1に低下した。Epoch AIの分析では、トークン当たり価格の下落は、性能ベンチマーク次第で年あたり9倍から900倍の範囲に及ぶという。能力のコストがそれほど急速に下がると、能力は競争優位の堀ではなくなる。競争優位性の源泉(堀)となるのはアプリケーションである。



