数百万人が使うスターリンク、月面着陸を担うスターシップ
公平を期していえば、スペースXは絵に描いた餅ではない。スターリンクは数百万人の加入者を抱え、企業向け・政府向け収益も拡大している実績のある稼ぎ頭だ。スターシップの試験飛行は着実に進歩している。NASAのアルテミス計画は、月面着陸でスターシップを頼りにしている。スペースXの打ち上げ頻度は他の追随を許さない。軌道上データセンター構想は、AIにおける地上の電力と冷却の制約に巧みに対処するものだ。
まだ存在しない技術への賭け、投資家が実行リスクを負う
しかし、今回の評価額は、まだ大規模には存在しない技術のほぼ完璧な実行を織り込んでいる。火星向けの貨物・有人飛行のスケジュールは依然として流動的であり、批評家が指摘するように、技術面・規制面・資金面で巨大なリスクが存在する。
マスクには大胆なビジョンを現実に変えてきた実績がある。再利用型ロケットやグローバルな衛星インターネットがその好例だ。しかし、公開市場の投資家は今後、夢と共にその実行リスクも背負うことになる。
初値の急騰を追うか、値動きの収束を待つか
熱狂は凄まじいものになるだろう。取引開始直後の数日間は株価が135ドル(約2万1465円)を大きく上回る可能性がある。初値の急騰を追いかける投資家は、熱狂が収まった後に後悔するかもしれない。忍耐強い投資家はIPO後のボラティリティが落ち着くのを待つのが賢明だろう。
パッシブのインデックス投資家、つまり指数に連動する商品について銘柄を選ばずに保有している投資家は、マスクの多惑星・軌道上AI構想という、ハイリスク・ハイリターンの賭けを半ば強制的に保有させられることになる。これに対処するため、均等加重(イコールウェイト)型や、スペースXのエクスポージャーを抑えた戦略を検討すべきだ。
このIPOはこれまでの常識・定石を塗り替える。株主価値のルールも塗り替えるかどうかは、まだわからない。今後の展開から目が離せない。6月12日は、歴史に刻まれる1日となるかもしれない。


