創業者などが保有するクラスB株式は10倍の議決権、マスクが支配権を握る
株式構造は、いかにもマスクらしい。クラスB株式は10倍の議決権を持つデュアルクラス(複数議決権種類株式)構造で、公開市場に株式が流通しても彼が過半数の支配権を維持できる(編注:クラスA株式は上場で一般投資家に売り出される株式。通常は1株=1議決権。クラスB株式は創業者・経営陣など内部者が保有する株式。1株あたり複数の議決権を持つ)。取締役会は事実上、マスクに無制限の権限を与えている。報酬は、火星への恒久的な植民地建設や100テラワット規模の宇宙コンピューティングといった、野心的なマイルストーンに連動している。
この構図はグーグルやMeta(メタ)のガバナンス体制を彷彿とさせる。だが、上場企業となった同社がこの構造を保つことは、長期的な株主価値の点で好ましくない前例となる。先見の明を持つ創業者に対する真の独立したチェック機能が存在しないのだ。
スペースXのS-1には、マスクが率いる他企業との重要な関連当事者取引が開示されている。これには、2025年にはテスラからサイバートラックを1億3100万ドル(約208億2900万円)分購入したことが含まれる。ブルームバーグの報道によると、登録データではスペースX単独で2025年第4四半期の米国サイバートラック販売台数の約18%を占めた。さらにテスラからMegapackを購入し、xAIのデータセンターに電力を供給している。これらは開示されており市場価格での取引だが、相互に絡み合った帝国に注目を集め、自己取引と受け取られかねない体裁について疑問を生じさせている。
スペースXは2026年初め、マスクのxAIと合併した。当時の評価額はスペースXが約1兆ドル(約159兆円)、xAIが2500億ドル(約39.75兆円)だった。これによりAIの専門性がスペースX社内に取り込まれた。しかし、xAIはより広範なLLM(大規模言語モデル)市場では依然として小規模なプレーヤーである。統合後の企業体は実証されていない軌道上コンピューティング事業に対して、引き続き積極的に資金を燃やしている。
上場15営業日でナスダック100に組み入れられる
筆者が最も懸念している点の1つであり、別途深掘りに値する論点が、ナスダックが最近導入した「ファスト・エントリー(早期組み入れ)」に関するルール変更だ。スペースXのような超大型IPOは、従来の3カ月の熟成期間に対し、上場後わずか15営業日でナスダック100指数に組み入れられるようになった(編注:ナスダック100指数とは、非金融企業のうち、時価総額上位100社の株式で構成される株価指数を指す。ナスダック総合指数とは異なる)。スペースXはこの特例措置を積極的に求めていた。
これは、インデックスファンド、ETF、401(k)(確定拠出年金)、年金基金からの大規模なパッシブ資金が、ほぼ即座に流入することを意味する。その結果、ロックアップ期間が完全に終了する前に、インサイダーや初期投資家による将来の売却に流動性が供給されることになる。要するに、IPO後の熱狂が冷め、株価が下落した場合、Rivian(リビアン)やその他の華々しくデビューした銘柄で見られたように、個人投資家やパッシブ投資家が損失を被る可能性があるのだ(編注:インデックス投資家。パッシブ投資家は、個別銘柄を選別して市場平均を上回ろうとするのではなく、特定の株価指数に連動する体裁で広く分散投資する投資家を指す)。


