しかも、たとえ命中したとしても、それだけで敵ドローンを撃墜できるとは限らない。とくに目標が大型のマルチローター機の場合、ただ機体に衝突するだけでは落とせないかもしれない。敵ドローンを確実に墜落させるには、ヨールカは動力・電源系統の一部など重要部位を狙ってそこにぶつかる必要がある。
ロシアはヨールカの有効性に関するデータを公表していない。その成績は、実戦環境で60%程度の迎撃成功率を達成しているとされるウクライナの迎撃ドローンと同じくらいなのかもしれない。ロシア国防省がソーシャルメディアに投稿した動画には、ヨールカが迎撃に成功したとみられるケースがいくつか映っている。ただ、ヨールカが目標に命中しなかったり、命中しても撃墜に至らなかったりしたらしい様子を捉えた動画もある。
ヨールカは比較的高度な自律追尾システムを採用しているため、命中率は上がるが、爆発性弾頭を搭載していないため、命中後、撃破に至る確率は下がる。また、ヨールカは高度な自律飛行制御システムを搭載していても、視界不良や中程度の風で進路が逸れてしまう可能性があり、その結果、有効性はさらに低下する。
ヨールカの使用数が限定的とみられる理由
ヨールカは低コストで量産可能なシステムとして特別に設計されたにもかかわらず、現時点で大規模には配備されていないとみられる。ヨールカが初めて確認されたのは、2025年5月9日の戦勝記念日だった。モスクワで行われた軍事パレードで、治安部隊が携行しているところが撮影された。以来、ヨールカの実戦使用を示す動画はごく少数しか知られておらず、その大半はロシア国防省が公開したものとなっている。
ロシア兵らが共有した前線の動画からは、彼らが小型ドローンに対する近距離防御で依然としてライフルや散弾銃に頼っていることがうかがえる。同様に、製油所をはじめとする重要インフラを守るロシアの防空網でも、ヨールカが大きな役割を果たしているようには見えない。ウクライナのドローンから十分に守りきれていない防空網の現状を踏まえれば、もしヨールカが大量に利用可能なのなら、はるかに広範に配備されているはずである。
ヨールカについては今年に入り生産の増強が発表されていたが、その後も確認事例が限られることは、生産が制約に直面していることを示唆する。とくにその高度な誘導システムは、光学センサーや赤外線カメラ、オンボードプロセッサー、AI関連の計算処理ハードウェアに依存する。


