米国のバイオテクノロジー企業Natera(ナテラ)で、従業員インテリジェンスおよびAIの責任者を務めるジェイソン・ミラーは、リポートでこう指摘している。「ChatGPTという言葉を履歴書に書くのは、履歴書に『Microsoft Officeに精通している』と書いておくようなものだ」。現状は、AIにまつわる専門用語が、応募者にとって格好の手持ちのカードになっており、実際の採用面接でも、AIについてスラスラと話す応募者が評価されがちだ。
この問題の解決法は、より厳しい質問を投げかけることではない。さまざまな異なるタイプのエビデンスを積み上げることが、解決につながる。実はこれは、優れた採用チームが注目し始めている取り組みでもある。
AI人材採用ミスの影響は多岐にわたる
AI人材の採用ミスが及ぼす影響が、1つの役職だけにとどまることはまずない。AIに習熟した人材の条件をきちんと定義できていても、効果的に実際の場面に当てはめられない場合、この問題が及ぼす影響は、組織の下流へと広がる。その結果、業務遂行が遅れ、アウトプットが不安定になる。さらに、AIの生成物を検証できる能力を持つ者がチーム内にいないため、こうしたコンテンツが、何の検証もされずに正しいと信頼されてしまう事態も起きる。
最後に挙げたリスクは、これらの問題点の中でも最も危険なものだ。AIの犯した誤りを誰も察知せず、そのまま企業の行動の基盤となる決断が下されるからだ。
テストゴリラのリポートでは、これに関連するものとして、「AI習熟によるサイロ」と呼ぶ問題を指摘している。これは、能力はあるが、AIの使い方を言葉で説明できない従業員によって、ノウハウに関する「スキルの属人化」が起こり、その人が組織を去るとノウハウそのものが消えてしまう、という問題だ。
組織の下流に及ぶ影響は、すでに実際のデータに表れている。米国では、「チームメンバーがAIに頼りすぎたがゆえに誤りが発生したケースが、過去6カ月以内に発生した」と報告した企業が33%に上っている。
AI人材の採用ミスが及ぼす影響は、業績の低下にとどまらない。不適切な人材がいると、チームメンバーが、AIの補助を受けた自分たちの仕事に置く信頼度も、悪い方向に変化しかねない。そして、失われた信頼を再構築するのは、たった一人の採用に関する決断を軌道修正するよりもずっと難しい。


