AIは必須の能力になったが、その習熟度は測定されていない
あるスキルを定義することと、実際に測定することは同じタスクではない。定義は、求められている資質を言葉でまとめたものだ。一方、測定は、その資質を実際に見つけられたかどうかを判定する行為だ。大半の企業は、前者にあたる定義を行なっただけで、後者の測定に関する問題も解決したと思い込んでいる。
テストゴリラの調査では、AI習熟度を正式に定義している企業は全体の71%に達したのに対し、この能力を測定する内部基準を設けている企業は50%にすぎなかった。さらに、最終的にAI人材の雇用で失敗を経験した企業は59%に上っている。
採用の仕組み自体は存在するものの、測定している評価対象が間違っているため、企業は、採用においてより良い候補を選ぶことができず、自信満々に間違った決断を下してしまうのだ。
問題の一つとして、採用の基準があまりに低く設定されているため、有能な人材を獲得するためのハードルとしてはまったく機能していない点が挙げられる。採用に関して最低限の基準を定めているかを尋ねたところ、企業の37%は「AIツールに関する知識」を挙げた。これはつまり、応募者が現在出回っているAIツールにどんなものがあるかや、大まかな活用領域を知っていればよい、ということだ。
これでは、AIツールを見聞きしているかどうかはわかっても、使いこなせる能力の有無はわからない。そのため、本来注目すべき応募者を見過ごしてしまう。上記の調査でも、応募者に対して、「AIを自律的に使って答えを検証する能力」を求めていた企業は26%しかなかった。
採用プロセスは長いあいだ、学歴や経験年数、面接での巧みな受け答えといった、「信頼できそうな」尺度に依拠していた。しかし、学術誌『The Academy of Management Proceedings』に掲載され、広く引用されているメタ分析論文では、経験年数と仕事のパフォーマンスのあいだの相関係数は0.06と、ほぼゼロに近いことが判明している。AI習熟度もこれと同じ採用プロセスを通じて判定されており、同様な問題が生じている。
AI習熟度を見極める面接で、実際の基準になるのは「口のうまさ」
採用面接は、応募者のコミュニケーション能力を評価するという目的で設計されている。自分の考えを明確に説明し、プレッシャーがある状況でも、自信を持って自説のメリットをアピールする能力が問われる場だ。しかし、実際の実行能力を測定するようには作られてはいない。
しかも、言葉だけであれば、容易に「盛る」ことができる。応募者は、たとえAIワークフロー構築の経験が一度もなかったとしても、エージェントを用いたワークフロー、検索拡張生成(RAG:retrieval-augmented generation)、プロンプト・チェイニング(AIモデルに望ましい回答を効率的に出力させるためにプロンプトを分割すること)といった専門用語を週末に大急ぎで学び、面接の場ではこれらの用語をいかにも自信ありげに説明することができる──実際にこれらのツールを実際に使ったことは一度もなくても。


