従来、こうした要素は企業価値の外側にあるものとされてきた。しかしいま、それらをいかに事業のなかに組み込み、持続的な価値として設計できるかが問われている。源流経営とは、文化の源流を起点に、価値の構造そのものを組み替える試みでもある。機能や価格では差がつきにくい時代において、価値はプロダクトの外側へと広がり、やがてその源流へとさかのぼる。素材や文化、土地といった要素は、他者が容易に模倣できない競争力となる。
では、こうした動きは、今後の日本経済にとってどのような意味をもつのか。
羽田未来総合研究所 元代表取締役社長執行役員の大西 洋は、日本の現在地について、「もはや経済大国ではなく、中進国であるという前提に立つべきだ」と語る。価格競争では世界で勝てない現実のなかで、日本が取りうる戦略は限られている。そのひとつが、地域に根ざした文化や技術を起点に、新たな価値を生み出すことだ。大西はこれを「生活文化産業」と呼び、「生活のなかから生まれた技術や文化を産業として再構築し、世界に届けていく必要がある」と指摘する。重要なのは、個々の企業の成功にとどめず、産地や文化圏全体として価値を高めていくことだ。「源流経営」がその起点となる可能性がある。だからこそ、文化の「源流」は企業経営における競争力になる。それは、どこで価値を生み出すのかという問いに対する答えであり、企業の戦略そのものを規定する起点となる。今後、企業は「源流をどこまでたどり、どこから価値を生み出すのか」を設計し直すことになる。その意思決定が、これからの企業の価値創造、競争優位性を大きく左右するだろう。


