元手300万円をビリオネアの資産へと変えた『コミュニティ思考』とは
嶋村吉洋|投資家、実業家、映画プロデューサー
高校を中退し、16歳で社会に出た嶋村吉洋は今、阪急阪神ホールディングス(HD)やサイバーエージェントなど保有する主要5社の株式評価額が約250億円に達する投資家・実業家。300万円の手元資金から始まった歩みを支えてきたのが、「コミュニティ」という発想だ。人々の信頼関係やネットワークが「資本」となり、個人や組織に利益が還元されるソーシャル・キャピタル。ビリオネアたちが注目するキーワードを、嶋村は投資・ビジネスで体現してきた。
嶋村は、ごみ収集の仕事、20代での起業などを経て30歳のころ、商品先物取引で資金を大きく増やすと、大阪に2棟、東京に1棟の物件を購入し不動産投資に進出。全国で約2000坪におよぶ物件の取得を進めたが、南海トラフ地震への警戒から不動産をほぼすべて売却し、その資金を株式に振り向けることで現在の資産を築いた。
嶋村のいうコミュニティとは、経営者やクリエイターなど、数千人規模のメンバーが参画する「自律的な経済圏」だ。そこでは新しい事業を始める人が出るたびに、最初の協力者、取引先、顧客が、その内側から立ち上がる。誰かが飲食店を始めると言えば、嶋村が物件を探し、内装業者、デザイナー、仕入れ先をつなぐ。店を出せば、コミュニティの仲間がまず足を運んでリピーターになっていく。コミュニティが事業の初速と成功確率を高めるための実行基盤になる。
不動産投資は、この基盤が最も鮮やかに機能した領域だ。通常なら空室のリスクがつきまとうが、嶋村の物件はコミュニティから入居者が決まっていった。その結果、稼働率100%を保持し、安定稼働の不動産を担保にレバレッジをかけ、資産規模を押し上げた。
上場株投資でも、コミュニティの考え方を貫く。例えば、200万株を保有する阪急阪神HD。
何もない土地に鉄道を敷き、住宅や学校を構え、宝塚歌劇や球団経営で熱狂を生み出す──創業者・小林一三が築いたのは、人が集まる仕組みを起点に、事業を多面展開していくモデルだった。嶋村が同社を保有銘柄に選ぶのは、自身が実業で培ってきた強みを、都市のスケールで体現する企業だからだ。
事業より先に、共に戦うチームをつくる。嶋村の発想は、不確実性の増す時代において、共創関係に基づく強固な社会資本こそが人々の挑戦を後押しすることを示している。

しまむら・よしひろ◎嶋村吉洋映画企画代表取締役社長。保有する主要5社(阪急阪神ホールディングス、サイバーエージェント、朝日放送グループホールディングス、テレビ東京ホールディングス、オリコン)の株式評価額が約250億円に達する。著書に『億万長者のコミュニティ資本論』。


