小山:この茶筒の太さを極端に太くするとかは、されないですよね?
八木:一応、4kg入るサイズもあって、自宅では米櫃として使っていますが、形はほぼ等倍なんです。開化堂の缶って、黄金比ではなく、白銀比なんですよ。角がちょっとダルいデザインというか、もっさりしているとずっと思っていたんですが、そこに皆さんが親しみやすさを感じる何かがあるのではないかと。
小山:僕はパナソニックとコラボされた「響筒(きょうづつ)」というワイヤレススピーカーをもっているんです。ああいう非常に革新的な商品がたくさんあるのかなと思いきや、意外と作っていないですよね。やはり茶筒が商品の王道にある。それはなぜですか?
八木:150周年を迎えて、僕の頭のなかには150本の茶筒のラインがあって、それを反復横跳びしているような感じなんです。反復横跳びしながら、珈琲缶とかスピーカーなど、いろんなアイデアものを作る。
小山:行って戻る、行って戻るみたいな。
八木:ええ。この反復横跳びのエネルギーこそが、ちょっとずつでも前に──未来に進んでいくイメージをもっていて。
小山:たぶん、プロデューサー思考が強すぎると反復横跳びをせずにどんどん違う方へと向かうけれど、八木さんご自身が職人だから王道に常に立ち戻りたいのかも。
八木:そうだと思います。2000年に「海外に茶筒を売りたい」と言って家に戻ったとき、父に「5年間はとりあえず作れ」と言われ、ずっと「見て覚える」で作り続けてきた。そこが原点なので、そこから外れることに違和感があるのかもしれません。
今月の一皿
「何よりお米が好き」という八木氏のために、釜で炊いた米のおにぎりに、熊本県菊池川産の最高級海苔を巻いて。

Blanc

都内某所、50人限定の会員制ビストロ「blank」。筆者にとっては「緩いジェントルマンズクラブ」のような、気が置けない仲間と集まる秘密基地。
小山薫堂◎1964年、熊本県生まれ。京都芸術大学副学長。放送作家・脚本家として『世界遺産』『料理の鉄人』『おくりびと』などを手がける。熊本県や京都市など地方創生の企画にも携わり、2025年大阪・関西万博ではテーマ事業プロデューサーを務めた。
八木隆裕◎1974年、京都府生まれ。京都産業大学を卒業後、3年の会社員生活を経て、2000年、開化堂に入社。2012年、京都の伝統工芸を担う同世代の後継者とプロジェクトユニット「GO ON」を結成し、国内外で伝統工芸を広める。著書に『共感と商い』。


