最初は「上司との相性やプロジェクトが悪い」と他責思考だった。しかしエース級の同期に翻訳をチェックしてもらって視点が変わった。
「同期は『どういう意図で何のときに使うの?』と資料の目的までさかのぼり、『それならこうしたほうがいい』と教えてくれました。彼の姿勢を見て、私は自分が優秀だとアピールするために資料をつくっていたと気づかされた。恥ずかしかったですね」
いい気づきはあったが、時すでに遅しで、3年目に「コンサルとしては厳しい」と判断される。頭角を現したのはGEヘルスケア・ジャパンに転職してから。グローバルのリーダープログラムに日本人で初めて選抜されるなど活躍した。
出産から復帰後に入った製造現場で、サプライチェーンマネジメントのダイナミズムに魅せられた。ただ一方で、日本の調達の非効率さを痛感する場面も多かった。
「病院で使うCTスキャンは単体ではなく、いすやキーボードなど一式で納めます。CTをつくったのにキーボードがなくて、慌てて商社に発注すると『数週間かかる』と返ってくる。それでは売り上げが立たないので、手配に奔走し海外工場から特急航空便で運んだこともありました」
日本のエンタープライズの調達をもっと効率化したい──。その思いが、スピード出荷を基本とするモノタロウに転職した理由のひとつになった。
現在、田村はエンタープライズ領域の強化に取り組む。売上300億円以上の企業は日本に約6,000社。そのうちモノタロウのシステムにつながっている企業は約1800社あるが、使っているのは本社と一部の拠点だけという顧客も多い。導入企業を増やすと同時に顧客の各拠点への浸透を図るため、25年は営業組織を強化。人員を約2割増やした。
ダイレクトマーケティング中心だった同社にとって、人が顧客に能動的にアプローチする営業体制の構築は未知の挑戦。田村自身もモノタロウでの営業は未経験で、「親会社のグレインジャーはエンタープライズ営業の経験が豊富。新しく集まってくれたメンバーもそれぞれに経験があり、知恵を集めながらやっていきます」という。
社長に就任して3年目。これから田村カラーをどう出していくのか。そう問うと、「自分の色を出すことに興味はない」ときっぱり。仕事を自己アピールの手段にしないというコンサル時代の戒めは、今も生きている。
最近朝8時の会議を再開した。ホルムズ海峡情勢の緊迫を受け、供給への影響を見極めるためだ。サプライチェーンの申し子が新たな修羅場をどう乗り切るのか。お手並み拝見だ。
たむら・さくや◎1982年、高知県出身。慶應義塾大学経済学部を経て2007年東京大学大学院経済学研究科修了。ボストン コンサルティング グループ、GEヘルスケア・ジャパンを経て、20年MonotaROに入社。24年より現職。


