リーダーシップ

2026.06.18 13:30

AI時代のリーダーシップ最前線、日本が勝てる最後の強みとは

AIの出現はすべての業界や領域にすでに大きなインパクトを与えている。あらゆる産業の構造と意思決定が再編される時代に、リーダーに残る役割とは──。


世界で勝負できるAI時代、日本の最後の強みは「きめ細やかさ」

村上敬亮|元デジタル庁統括官、東京大学公共政策大学院 特任教授、慶應義塾大学大学院SDM 特任教授

私はこれまで官僚としてクールジャパン戦略や地方創生の業務に携わったあと、デジタル庁の統括官として活動してきた中で、AI時代における日本のリーダーに求めることがあります。それは日本の強みを意識して勝負してもらいたいということです。たとえば、ゲームを作る際、フォントの一つひとつにこだわるなどソフトの丁寧な作り込み、日本食の細部まで行き届いた気遣いなど、日本人特有のきめ細やかさ・しつこさをAI時代のサービスに活かせれば、スピーディーでスマートだけれど大雑把な欧米文化にはない、日本独自のAIの特色がつくれるでしょう。

ただし、条件があります。それは自身のプロダクトやサービスだけにこだわるのではなく、そのこだわりを理解できる「文化」や「市場」「ユーザー」とともに生み出しきっていくという胆力も持ってほしいのです。カリフォルニアロールで満足していた外国の方が、日本で美味しいお寿司に出会い、久兵衛に向かうように、私たち日本人の精緻なサービスや文化を理解してもらえて初めて日本が評価してもらうことができるからです。

AIが出てきて、誰もが標準的な答えを得ることは簡単になりました。だからこそ、AI時代のリーダーは、異質なものとの出会いやその比較から気づきを得て、オリジナルな何かをつくり出していかなければなりません。

日本人経営者は、同業他社の社長とスナックで怪気炎を上げているイメージもありますが、それが有為なフィードバックとなるのは、互いに同じ製品のシェア争いでメシが食えた時代の話です。新しい時代には、肩書やメンツを捨て、常に他流試合に挑み、素で勝負できるリーダー気質が大切になります。それが相対的に自らのポジションを知るきっかけにもなり、一般的ではない、オリジナルな立ち位置や発想の発見につながっていくからです。AIは、指示されたことには忠実ですが、自ら見知らぬ出会いに行くことはないので、ここは人のアドバンテージのはず。今後、他流試合のできるリーダーこそ、強い組織や市場づくりで求められることになるでしょう。

このようにあえてリスクある場所へ踏み込む精神はリーダーにとって必須要件です。とある勉強会で、著名なヘッドハンターの方に教わりました。「みんな、偉人の伝記を楽しく読むと思う。しかし、結末を知らずに読んだら、その多くは辛いシーンばかりが連続する厳しい物語だ」と。言い換えれば、偉人とは、どんなに辛い状況にも果敢に挑戦し、最後まで諦めずにやりきった人だとも言えそうです。

しかし、リーダーはひとりだけで動いているわけではありません。諦めないリーダーについてきてくれる人たちがいる。そのためにも、リーダーには「愛想」や「想像力」の豊かさも重要です。辛気臭い人は一人でしか動けない。今、日本社会は、化学のブラウン運動に例えると、多くの分子が不活性化している状態に陥っています。みんながワチャワチャ楽しそうに活動ペースを上げ、互いが出会う確率を上げていく。そのことが結果的に、多くの人に、変革のリーダーとして覚醒する機会を生み出していくだろうと思います。

むらかみ・けいすけ◎通産省入省後、クールジャパン戦略立ち上げなどに携わり、2021年9月よりデジタル庁統括官。25年7月1日に退職し、11月より現職。

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文=フォーブス ジャパン編集部 イラストレーション=ブラチスラフ・ミレンコビッチ

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