リーダーシップ

2026.06.18 13:30

AI時代のリーダーシップ最前線、日本が勝てる最後の強みとは

「美しさ」と「楽しさ」でイシューを設計せよ

筧 裕介|issue+design代表・工学博士

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日本では高齢化の進行とともに認知症のある人が増えています。私は、認知症を単なる知識としてではなく、当事者の世界観としてとらえてもらうことを目的に、『認知症 世界の歩き方』(ライツ社)を出版するなど、認知症の人々が生きやすい社会づくりに取り組んできました。世界でシリーズ累計20万部を超える反響をいただいています。

もともとは博報堂で商業デザインやブランドデザインに従事していましたが、2008年にソーシャルデザインを専門とするissue+designを立ち上げました。以来一貫して、社会課題に対してデザインでアプローチする活動を続けています。

私は、デザインとは「人の認知を支え、拡張し、異なる視点を接続する営み」だと考えています。認知症のプロジェクトもまた、異なる世界の見え方を可視化し、社会とつなぐ試みでした。

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近年、AIやデジタルの進展によって、人は自分に最適化された情報を瞬時に受け取れるようになりました。しかしその結果、自分の見たい世界だけに閉じ、異なる価値観や世界を想像する機会が失われつつあるとも感じています。だからこそ、デザインの役割はむしろ重要になっています。多様な人の価値観を可視化し、それを社会のなかで共有可能なものにすること。それが私のライフテーマです。

こうした変化は、リーダーに求められる能力にも影響を与えています。これまでリーダーには、論理や分析といった能力が重視されてきました。しかしこれらの領域は、AIによって代替されやすくなっています。では、人間に残るものは何か。それは「感性」だと私は考えています。

私自身、デザイナーとして長く大切にしてきたのが、「美しさ」と「楽しさ」です。博報堂時代から一貫して問い続けてきたのは、「それは真に美しいのか。本当に面白いのか」というシンプルな問いでした。面白さや楽しさは人の感情を動かし、新しい行動や価値を生み出す起点になります。

一方で、美しさはより上位の概念です。楽しいものや面白いものは一時的に注目を集めますが、消費されていくものでもあります。しかし、美しいものは時代や社会の文脈の中に適合し、長く受け入れられ、次の世代へと残っていきます。美しさとは無秩序の中に秩序や調和を見出す力であり、進化の中で淘汰されずに残るものです。

そして、この「無秩序や違和感に気づく力」こそが、人間にしかできない営みだと私は思います。AIは既存のデータの延長線上で最適解を導きますが、そもそもの問いや違和感の発見、すなわち「何を問題とするか」を定義することは、人間の役割として残り続けるはずです。

私たちの組織名「issue+design」も、まさにそこに由来しています。issueとは違和感や課題を見つけること。+designは、それを想像力と創造力によってかたちにしていくことです。

イシューを見つけ、想像し、創造する。この一連のプロセスこそが、AI時代においてリーダーに求められる本質的な役割ではないでしょうか。

かけい・ゆうすけ◎工学博士。2008年issue+design設立。社会課題解決・地域活性化をテーマに、デザイン領域のさまざまなプロジェクトを手がける。

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文=フォーブス ジャパン編集部 イラストレーション=ブラチスラフ・ミレンコビッチ

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