エージェンティックAIと仕事をめぐる議論では、「雇用が消える」という見出しが圧倒的に多い。しかしデータは、あまり注目されていないもう一つの物語を語っている。
LinkedInによる2026年1月の分析は、それを数字で示した。AIはすでに130万件超の新規雇用を生み出しており、「AIエンジニア」「フォワードデプロイドエンジニア」「データアノテーター」といった肩書きが登場している。さらにAIデータセンター関連の雇用も60万件超ある。LinkedInはこれを「ニューカラー時代」と呼ぶ。ナレッジワーカー(知識労働者)のスキルと高度な技術、そして人間ならではの強みを融合させた労働力の時代だ。AIエンジニアは2年連続で、米国で最も急成長している職種の第1位になっている。
クラウドストレージ大手のBoxは、このトレンドを具体的に示した。AI主導の採用に関する『ニューヨーク・タイムズ』の記事を受け、Boxの共同創業者兼CEOであるアーロン・レビーは、2年前には同社に存在しなかった職種について説明した。その領域はエンジニアリングやIT、そしてGo-To-Market(GTM:市場参入・開拓戦略)にまたがり、新しいAIモデルを評価する役割、社内の業務を再構築する自動化エンジニア、顧客における稼働開始を早めるためにフォワードデプロイドエンジニアリング(ソリューションの構築から実装、展開、維持まで一貫して担う手法)を回すサービスチームなどが含まれる。
レビーの主張は、Boxが例外ではないという点にある。Boxは先行指標にすぎず、同じ変化が顧客企業の内部でも起きているのだ。
研究機関による調査研究もこれを裏付けている。
世界経済フォーラムの『仕事の未来レポート』は、2030年までに1億7000万件の新たな雇用が生まれる一方で、9200万件の雇用が失われ、差し引き7800万件の雇用が増えると予測している。AIと機械学習の専門家は、世界で最も急成長している職業の上位3つに入る。マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)は、目指すべき姿を「エージェンティック組織」と定義している。そこではジェネラリストがエージェンティックAIのオーケストレーターとなって監督・指導・統制する、まったく新しい役割が生まれる。
したがって問題は、AIが雇用を生み出すかどうかではない。どのような雇用が生まれ、そのうちどれが、単なる戦略発表ではなく実際に組織を再編した企業を示すものなのか、である。
重要な20職種は以下の通りだ。
AIとエージェンティックAIの技術的中核
1. フォワードデプロイドエンジニア(FDE)
顧客の現場に入り込み、そのスタックに合わせてエージェント型ワークフロー(AI自身が自律的に計画を立ててタスクを実行するプロセス)を構築・調整する。パランティア・テクノロジーズ(Palantir Technologies)が開発し、OpenAIやAnthropic、Google、EY(アーンスト・アンド・ヤング)が採用している。LinkedInは、前述した新規雇用の「130万件」という数字を押し上げた主要3職種の1つに挙げている。
2. AIエンジニア
米国で最も急成長している職種であり、LinkedInの新規AI求人63万9000件のうち7万5000件を占める。AIプロダクト(AIを活用した製品・サービス)やエージェント、大規模言語モデル(LLM)を構築・運用する。応用AIエンジニア、生成AIエンジニア、LLMエンジニアと呼ばれることも多い。



