英調査会社ユーガブによる4月末の調査では、旅行に関する世論がドバイ、トルコ、米国、イスラエルへシフトしていることが明らかになった。これらの目的地への渡航に対する英国の消費者の意欲は、軒並み低下した。
英調査会社オックスフォード・エコノミクスによる報告書は、現在のように紛争が1〜2カ月以上長期化するシナリオでは、2026年に外国人旅行者数が約3800万人減少し、前年比27%減になると予測した。これは、年間の総額で560億ドル(約8兆9600億円)の損失に相当する。
紛争の長期化は行き先だけでなく行動そのものを変える
政治的な不確実性が続き、インフレや生活費上昇への懸念が強まるなか、旅行者たちが価格上昇と不確実性に対応するために旅行の計画を変更していることが既にデータで示されている。特に目的地の変更が顕著で、今夏は遠距離の航空移動ではなく鉄道旅行やステイケーション(近場での休暇)、そしてより自宅に近い場所への旅行に大きく傾いている。
米旅行市場調査会社スキフトが報告した最近のデータも、この見方を裏付ける。夏の需要は中東からスペインや南欧、カリブ海へと移っている。
その地域を訪れる旅行者だけでなく通過する旅行者にとっても、被害は甚大だ。実際、多くの乗客が中東を経由しており、同地域は世界の国際乗り継ぎ(トランジット)旅客数の14%、国際到着旅客数の5%を占める。
湾岸地域は、南アジアや中東、中国、欧州、米国への移動に理想的である。トランジットという観点では、そこはまさに「東西が交わる場所」だ。紛争が長引けば、旅行者が訪問するのはもちろん、経由することさえ望まなくなる可能性があり、航空業界に広範な影響を及ぼしかねない。
決定的に重要なのは、過去2カ月の損害が、世界の旅行業における地理的なシフトの問題だけではない点だ。それは行動様式の変化でもある。信頼感とタイミングは目的地と同様に重要で、多くの旅行者が決断を先送りし、状況の推移を見極めるために予約を遅らせている。
したがって、中東観光に対する紛争の影響は、欠航やホテルの空室にとどまらない。旅行者の心理に、より深い変化をもたらす可能性がある。
湾岸の主要都市全体で安全に対する印象が損なわれ、観光客数と旅行者支出が落ち込むなか、紛争が終結した後も同地域は長期的な構造的損失を被るリスクがある。最終的に中東観光の回復は、安定の回復だけでなく、たとえ通過するだけでも、地域の安全性に対する世界的な信頼を再構築できるかどうかにかかっている。


