このワールドモデルの最大の利点は、現実世界では滅多に遭遇しない「エッジケース(極端な状況)」を意図的に、かつ大量に生成できる点にもある。マグラス氏が説明を続ける。
「例えば、東京を想定したシミュレーションモデルの中で、『もし六本木で100匹の小型犬が一斉に逃げ出して、通りに出たらどうなるか』といった状況下で試験を行いました。私たちのシミュレーションモデルは、現実には数百万マイルの走行に一度しか起こらないような極端なイベントを作り出すことができます。かつては何年もかけてビデオアニメーターに作成してもらっていたような状況を、今では複数の起こり得る事例のひとつとして、迅速にAIを使って生成できます。これによりソフトウェアの学習速度が大幅に向上しました」
安全性と快適さを最優先に掲げる車両開発
ハードウェアの側面でも最適化が進んでいる。現在、Waymo Oneの主力車両はジャガー・ランド・ローバーのI-PACEであるが、中国のジーカーや韓国のヒュンダイと次世代車両の開発を進めている。また、トヨタ自動車とも重点的な提携の検討を開始した。
技術的な進化としてはカメラやセンサーの数を削減しつつも、一つひとつの品質と処理能力を数倍に引き上げることで、コスト削減と安全性向上の両立を図っている。さらに、乗車ごとの清掃の負担を軽減するための素材の選択や、ゆったりとした足元のスペース確保など、車内におけるユーザーエクスペリエンスの向上にもリソースを投入しているとマグラス氏は語る。
一方で、車両の外観デザインについては、あえて「自動運転車であること」を明確に示すことをコンセプトにしている。
「自動運転車両において最も優先されるのはセンサーの性能や配置、これによる安全性の確保です。その上で、Waymoのデザインチームは、車両に先端テクノロジーが搭載されていることを、周囲が見て一目で認識できることも重視しています。大型のセンサーデバイスを隠さないデザインは、時に安全なWaymoの車両であることを周囲にアピールする効果を発揮します」
配車サービスの提供形態において、Waymoは自社アプリ「Waymo One」による直接提供に加え、Uberなどのパートナー企業を通じたネットワーク展開も並行して進めている。技術開発に特化するWaymoと、各都市での運用管理に長けた現地パートナーが協業することで、迅速なエリア拡大と各地域の需要への最適化を目指す戦略だ。


