AI時代に必要なのは「問いを立てる力」のあるリーダーではないか。B Corp ムーブメントを主導する溝渕由樹とB Corp企業のリーダーが議論した。
社会や環境に配慮した公益性の高い企業に対する国際的な認証「B Corporation(B Corp)」の取得企業は、世界で1万社を超えるなか、日本でも80社を突破した。AIがビジネスの風景を塗り替え、働き方の前提が変わる今、あえて「公益」を掲げるB Corp企業のリーダーたちは、社会に対してどのような価値を提示していくのか。岡山の縫製工場、書籍の買取販売業、窓の卸売業と異なるフィールドで「三方良し」を体現する3人のリーダーが、新しいリーダーシップを語り合った。
溝渕由樹(以下、溝渕):AIが社会に入り込む未来に、リーダーにはどんな資質が必要になると思いますか。
井筒伊久磨(以下、井筒):リーダーは俯瞰的な視野をもつ必要があると思います。例えば、僕らナイスコーポレーションが1990年から縫製工場を営んできた岡山県倉敷市は世界的にもデニムの生産地で知られていますが、縫製業は従業員の高齢化と人手不足が進んでいます。これは日本の製造業全体の問題です。事業を続けるうえでも、産業を守る意味でも、リーダーはAIとは反対にある手作業によるモノづくりの現場の価値の創造など、あらゆる社会課題に向き合う必要があります。私の場合、それがB Corp取得を目指した理由でもあります。
──「何のためにそれを行うか」という問いを立てる力が、より求められますね。
鳥居 希(以下、鳥居):現場の違和感から出発する、という点は私も同じです。私は今、中古の本から新刊までを扱うバリューブックスの代表取締役を務めていますが、前職の証券会社時代にお金儲けのパワーを、もう少し社会を良くする方向に向けられないのか、と思ったことがB Corpの考え方に触れるきっかけでした。本の流通の現場にはまだ解決できていない課題が多くあります。例えば、1日に3万冊届く本のうち、中古市場の需給バランスのため買い取ることができているのは約半数。残りの多くは古紙回収に出さざるをえません。そうした現実と向き合いながら、自分たちの存在意義を追求する。そうして初めてリーダーとなっていくのだと思います。



