松本浩志(以下、松本):おふたりの原点が地域の持続可能性や過度な経済成長信仰にあると同様、私の原点も社会への「違和感」でした。今は家業の窓ガラスなどの卸と販売を行う会社の経営をしていますが、前職は電機メーカー。爪に火をともすようなコストダウンを行いながら、競合他社に勝つためにいとも簡単に値下げを行う姿勢に違和感を覚えました。
家業に移ってからも、安さを追求した結果、建築士が不正に走って構造計算書を偽造するという世間を震撼させる事件があり、これが企業活動を問い直すきっかけになりました。それから、業績ばかりでなく、人や社会関係などに目を向け、2009年から理念経営を開始しました。AI時代にリーダーシップが注目されるのも、体温ある社会、経済活動に人間性が求められていることの表れじゃないかと思います。
溝渕:皆さん、経済活動を通して社会を再生されていますね。B Corpの取得は組織や周囲にどう影響しましたか。
松本:理念経営が浸透していたので大きく変わりませんが、仲間は増えました。卸業という意味では、商品を卸すだけでなく、パーパス経営の支援を行うなど、考え方の卸も行うようになっています。社外でも例えば、住宅は新築よりも、既存の建物をいかに長く使えるかに価値転換が始まっているので同じ思いをもつ方々と次の時代への架け橋づくりをしています。
井筒: 我々の場合は従業員とのかかわり方が少し変わりました。新たに従業員全員に対して満足度調査や個人面談、半期に一度の財務諸表の開示と勉強会などを通して、風通しの良さや率直な意見を出しあえる関係づくりができました。これは、 B Corpが重視する「透明性」を意識した結果です。
溝渕:B Corpは情報の透明性を大事にしていますからね。財務諸表の公開だけでなく、従業員とその家族にも財務諸表の読み方教育まで行うことを推奨しています。
鳥居: 知ることで、自分の意見や行動に生かすこともできます。
井筒:従業員からこんなに意見が出るのかと驚きました。会社を良くするプロセスですし、組織の結束にもつながります。
溝渕:B Corpは人との関係を深めるものですが、一方でAIの台頭により経済活動のスピード感は変わっています。この変化をリーダーとしてどうとらえていますか。


