授業では、あえて受講者の頭を混乱させる。「1時間前の先生の話と矛盾してるぞ」と。「起業家や経営者コミュニティにいると方法論がひとつになりがちですが、人間は本来矛盾しているものだし、絶対に正しい方法論なんてない。正解を見つけるより、まずは『思い切って挑戦していいんだ』と気づいてもらうことのほうがはるかに重要です」。さらに、AIにおおまかな雰囲気を伝えて高速でコーディングする「バイブコーディング」の授業も実施。ゲストとして訪れた“ギャル”の望みにかなうアプリをその場でつくる実践課題も行われた。「5分もあればアプリが生まれ、そのたびに爆笑が起こる授業でした」。
そうしたクリエイティブ力を、ふたりはどのように養ってきたのか。それは「ノイズ」と「遊び」の摂取だ。 鈴木は、効率化の先にある「非効率な体験」の重要性を説く。
「合理的に到達できる最高地点がAIなのだとしたら、僕ら人間はその逆が得意。つまり偶発のなかに輝くものを見つける力。AIで効率化してくれた時間の余剰で、もっとノイズのような体験をしたいと思っています。気になる人に会うために足を運び、今まで読んだことのなかった本を読み、予測不能な出会いに体を委ねることで新たな発見が生まれる。一見非合理な時間が、AIには絶対に生み出せないクリエイティブのための“血肉”になるはずです」(鈴木)
ジューストーもこれに同意し、「AIが出す“普通”の情報をただなぞるだけの人は淘汰される」と語る。「真面目に事業計画を立てて、着実に正解を選択していくのがこれまでのリーダーでした。これから“世界を変える”ようなクリエイティブや事業を生みだすには、その枠から外れてマイノリティになるしかない。その意味で、遊びこそがAIへの最大の対抗策なんだと思います」
美術大学で油絵を学びキュレーターとしても活躍していたジューストーは、20年にアートの世界からスタートアップの世界へと飛び込んだ。
「子どもはみんな、自然と泥団子をつくったり、絵を描いたりするじゃないですか。それなのに大人になると忘れたように『自分にはクリエイティブ力なんてない』と言う人がいる。0から1を生み出すのは人間の本能なので、数字や情報といった“正解らしいもの”にとらわれないことも大切です」
AIによる情報の均質化によって誰もが同じスタートラインに立てる時代だからこそ、「合理」の外側にある体験がリーダーの決断に強度を与える。ふたりが見据えるのは、AIを使いこなした未来で、人間特有の“揺らぎ”を競争優位に変えるリーダーの姿だ。
ジューストー・さら◎1995年生まれ。幼少期をカナダとハワイで過ごす。2018年武蔵野美術大学卒業。ギャラリーでキュレーターなどを務めたのち、00年にAwwに入社。23年「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」受賞。2024年4月に「TED Conferences」に登壇。
すずき・けんた◎1996年生まれ。10代のころから映像作品をつくりはじめる。多摩美術大学中退後、電通入社。スタートアップのクリエイティブ支援や、グローバル企業のコミュニケーション立案・企画のほか、個人としてMV・映画の監督を務める。2025年、「Firstthing」を立ち上げる。


