筆者は普段からコーヒーをよく飲む。また、心血管疾患や認知症のリスク低下を報告する記事など、コーヒーの健康効果に関する話題にも関心を持っている。
最近発表された論文では、コーヒーが腸内環境や気分に良い影響を与えることが強調された。アイルランド国立大学コーク校の研究者らは、適度な量(1日3~5杯)のコーヒーを定期的に摂取することで、消化を助けるヒトの消化管微生物叢(そう)内の「善玉菌」の増殖が促進されることを発見した。これらの善玉菌は、腸内の悪玉菌や胃腸感染症の予防にも役立つ可能性があるという。
さらに、気分の改善効果も確認された。カフェイン入りコーヒーとカフェインなしコーヒーでは、反応に興味深い違いが見られた。カフェイン入りコーヒーは不安、精神的苦痛、血圧を低下させ、注意力とストレス対処能力を向上させた一方、カフェインなしコーヒーは睡眠、身体活動、記憶力を向上させた。いずれの種類のコーヒーもストレスや抑うつ感を軽減し、全体的な気分と認知機能を改善した。
興味深いことに、これらの効果は「微生物叢・腸・脳軸」と呼ばれる経路を通じて相互に関連しているようだ。正確な仕組みは完全には解明されていないものの、研究者らはコーヒーが腸内細菌に及ぼす影響と脳に及ぼす影響との間に、興味深い相関関係があることに気づいた。例えば、ベロネラ属の2種はいずれもテオフィリンとの強い関連性があり、テオフィリンは複数の認知機能スコアとの強い関連性があるという。
また、コーヒーの摂取は、炎症マーカーの減少や抗炎症性サイトカインIL-10のレベルの上昇とも関連していた。論文の著者らは、これらの知見は、コーヒーまたはその成分が、抗炎症作用を持つフェノール化合物を介し、免疫機能に特定の効果をもたらす可能性があることを示唆していると指摘した。栄養士のニコラ・シュブルックは、これらの抗炎症性化合物が「細胞を損傷させる有害なフリーラジカルを中和することで、がんのリスクを低減するのに役立つ可能性がある」と説明している。
もう1つの興味深い発見は、「コーヒーの気分改善効果は、コルチゾールの生理的変化を伴わずに生じる」という点だ。これは、コーヒーの気分改善効果が、他のストレス軽減法とは独立して起こり得ることを示唆している。
他の研究では、コーヒーを飲むと一時的に血圧が上昇する可能性はあるものの、血圧が正常な人であれば、長期的な高血圧症の発症リスクを高めることはないことが示されている(重度の高血圧症の場合は、コーヒーを大量に飲む前に医師に相談しよう)。
今回の論文では、具体的にいつコーヒーを飲むべきかについては言及されていないが、先行研究では、1日を通してコーヒーを飲む人より、朝の時間帯に飲む人に健康上の利点が現れやすいことが示された。
コーヒーは、カフェインをはじめとする複数の生物活性成分を含む複雑な飲料だ。人間は複雑な生物システムであり、消化器系、循環器系、神経系の間には多くの相互作用が存在するが、その全容は依然として部分的にしか解明されていない。
今回の研究は、こうした複雑性を詳細に検討し、その根底にある仕組みの一部を解明しようとした点で注目に値する。研究者らが複数の発見を次のように要約しているのが印象的だ。「コーヒーは腸内フローラ(腸内微生物叢)に影響を与え、有益な(ポリ)フェノール類や代謝産物を増加させ、抗炎症作用をもたらした。これは、カフェイン含有量にかかわらず、コーヒーが認知機能、心理状態、免疫機能、代謝機能の健康を、それぞれ異なるものの互いに補完し合う形で支えていることを示唆している」



