CEOs

2026.06.04 12:15

完璧な戦略なのに、社員が動かない──組織に共感を生む「WHYの物語」の紡ぎ方

folyphoto - stock.adobe.com

何万人もの社員を当事者に変える「物語」の力

古今東西、人が共感を寄せてきたものがあります。それは、「物語」です。

advertisement

人は誰しも、自分の人生や仕事に意義を求めています。それを強く感じさせるのが、「物語」です。特に、自分が大義のための役割を担っていると感じられる「物語」は、人の感情を強く動かします。

それは、単なるスローガンではありません。

「自分たちは何のために存在するのか」
「なぜ変わらなければならないのか」
「どんな未来をつくろうとしているのか」
「社会に対して、何を成し遂げたいのか」

advertisement

そうした一連の問いへの答えです。

歴史を振り返ってみても、それが分かります。少し極端な例かもしれませんが、例えば革命時の人民感情は、人の心理を理解するうえでわかりやすいメタファーではないでしょうか。

革命に参加するにせよ、反対するにせよ、どちらの立場でも多くの人がその壮大な物語に意義を感じ、自らの役割を果たしたいと願っていた。そういった時に、人の内側には大きなエネルギーが発生します。

企業の変革についても、同じことが言えるでしょう。単なる業務命令ではなく、社員が「この変革には意義がある」と共感し、主体的に動けるようにすること。そのために経営者は常に「物語」を描き、「WHY」を効果的に示し続ける必要があるのです。

ひとりの人間を動かすだけなら、ロジックによる説得で済むかもしれません。しかし、何千人、何万人という組織を動かそうとすると、人々の心を動かす大義ある物語が必要です。

経営者が物語を語らなくなったことは、今の日本経済界の最も大きな問題かもしれません。

経営者の「内なる火」は、どう灯るのか

では、人を動かす「WHY」は、どうすれば生まれるのでしょうか。セッションの終盤、クライアントは、ふとこんなことを口にしました。

クライアント:会社の「WHY」を考えようとして思ったのですが、そもそも社長である私自身はなぜ、この会社を発展させたいんでしょうね。

 
経営者としては、少し危うい告白にも聞こえるかもしれません。
しかし実際には、多くのリーダーが同じような根源的な問いを抱えています。

「なぜ、自分はこの仕事をしているのか」
「なぜ、この会社を続けたいのか」
「なぜ、変革を成し遂げたいのか」

多くの経営者はここで、頭の中で一生懸命考えて「WHY」をつくろうとしますが、上手くいきません。

鈴木:私は、「WHY」は頭で考えてひねり出すものではないと思っています。人や街、自然、社会とのインタラクションの中で自己変容が起きて、自らのものの見方や感じ方が変わっていく。その結果として、少しずつ内側から立ち上がってくるものではないでしょうか。


顧客に会う、現場を見る、海外へ行く、異なる文化や価値観に触れる。そうした生きた体験が、身体感覚を変えていきます。そして自己変容が起き、「WHY」を手に入れられるのです。その時初めて、経営者の言葉に熱が宿ります。だから優れた経営者ほど、「外に出る」のでしょう。

対話の最後、クライアントはこう語りました。

クライアント:来週、アメリカに出張します。いつもは投資家に会い、食事をして終わり、といったスケジュールですが、今回は少し街を歩いてみようと思います。現地のスタッフとも話してみたい。自分の身体感覚が少し変わるかもしれません。


社員の心に火をつける前に、まず経営者自身の心に火が灯っているか。
正解のない今の時代だからこそ、経営者の「実感を伴ったWHY」が問われているのかもしれません。

過去記事はこちらから>>

文=鈴木義幸

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事