テクノロジー

2026.06.15 13:30

スマホの次はAIグラスか。「身体の自由」が示す新デバイスの未来

スマートフォンは、私たちの生活を飛躍的に便利にした。それと同時に、手と目を奪う「不自由」も生んだのではないか。マクアケ創業者による連載第64回。

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スマートフォンでできることが、この十数年で一気に増えた。調べる、買う、連絡する、撮る、見る、移動する。少し大げさに言えば、生活のかなりの部分がスマホのなかで完結するようになった。実際、スマホへの接触時間は今も伸びており、博報堂による2025年の調査では1日あたり165.1分と過去最高を更新している(メディア接触の内訳)。誰もが知っていることだが、スマホの便利さは、なお加速しているのだ。

しかし、その便利さの裏側で、私たちは別の不便さを見落としてきたのではないか。スマホを使っている時間、人は手を奪われる。視線も奪われる。つまり、便利になればなるほど、私たちの手と目が小さな画面に縛りつけられていく時間は増えていく。にもかかわらず、その不自由さはあまり意識されてこなかった。便利さの総量は増えたのに、身体の自由度はむしろ減っている。そのジレンマは、スマホが生活インフラになった今だからこそ、より大きくなっているのではないだろうか。

このことを強く実感する出来事があった。生活者向けの新商品や新サービスを応援購入できるECプラットフォーム「Makuake」でも、ここ最近AIガジェットの出品が増えており、とりわけAIグラスに注目が集まっているのだが、そのひとつである「Rokid スマートAIグラス」を使わせてもらったときに、スマホの不自由さに気づかされた。Rokidは、視線の先にある情報を解析し、文字と音声で説明してくれる。通訳、検索、ナビゲーション、撮影などの機能を視界のなかで呼び出せる設計になっており、まさに「スマホを取り出す前に、もう答えが目の前にある」体験なのだ。

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興味深かったのは、単に機能が多いことではない。手が空くこと、そして目まで少し自由になることだ。スマホで地図を見るとき、人は立ち止まり、画面に集中する。検索するときも、文字を打ち、画面を追い続ける。だがAIグラスでは、歩きながら視野を保ったまま案内を受け、見ているものについて、その場で必要な情報を受け取ることができる。情報へのアクセスが、これまでより自然に生活へ溶け込んでいく感覚があるのだ。

便利さが生んだ不自由を解消

これは単なる新型ガジェットのひとつというくくりではないのかもしれない。操作の主役が「指で触る」から「声で頼む」へ、情報の入り口が「手元の画面」から「視界のなか」へ移る変化だからだ。デバイスの競争は、スペックの足し算から、身体をどれだけ拘束しないかという引き算へ向かい始めているようにも見える。

数年前、「スマートグラス」というカテゴリは少し早すぎる未来の商品にも見えた。しかしAIが加わったことで、ようやく実用品としての輪郭が見え始めている。重要なのは、情報量を増やすことではない。生活の動きを止めずに、必要な情報を届けることだ。スマホが“何でもできる端末”だったとすれば、AIグラスは“何かをしながらでも使える端末”になりつつある。

もちろん、スマホがすぐに消えるわけではない。鮮明な画面が必要な場面も、指で操作したい場面もまだ多い。ただ、生活の中心デバイスは、より高機能なものに置き換わるのではなく、より自然に使えるものへと移っていく可能性がある。そう考えると、スマホの普及から十数年を経た今、私たちはようやく次の生活デバイスの入り口に立ち始めたのかもしれない。

新しいデバイスが時代を変えるのは、ただ便利だからではない。前の時代の便利さが生んだ不自由を、静かに解消するときだ。AIグラスは、まさにその条件を満たし始めている。


なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズ(現グロース)に上場した。

文=中山亮太郎 イラストレーション=岡村亮太

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