リーダーシップ

2026.06.14 14:15

広島初の女性知事 横田美香の「絶対に逃げない」リーダーシップ

横田美香|広島県知事

横田美香|広島県知事

2025年11月、広島県初の女性知事に就任した横田美香。農林水産省、富山県副知事、広島県副知事とリーダーシップを発揮してきた彼女が、今理想とする「リーダー像」とは。


イメージカラーは、瀬戸内の海を感じさせる爽やかなブルー。すっと足を揃えて、「よろしくお願いします」と頭を下げる所作は洗練されていて、小柄ながらも存在感を放っていた。「こんな感じ? 右側から撮ってもらったほうが良いのかも」。撮影に応じながら場の空気をほどいていくのは、広島県知事の横田美香。同県で16年ぶりに誕生した新しいリーダーだ。

日本初の女性首相が就任した翌月の2025年11月に、横田も県政史上初の女性知事に選ばれた。「実りある広島新時代へ」とスローガンを掲げ、8割以上の支持を得て当選。女性としての政策に期待を寄せる声も多く、「自然体で、私の考えをしっかりと伝えていきたい」と応える。就任から約4カ月でのインタビュー。あわただしい日々を振り返った。

「本当に大変でした。実質2カ月で当初予算を編成しなければならず、限られた時間のなかでたくさん議論して。リーダーとして、“率直に言う”“わかりやすく伝える”ことを意識してきたつもりです」

この発言の土台には、横田のリーダーシップを培った原体験がある。95年に農林水産省に入省し、そこで30年間キャリアを積んできた。法改正や国際交渉、民間企業への出向などさまざまな経験を重ねて、初めて管理職になったのは41歳の時だった。食品企業のリスク管理に係る対策を担う、食品企業行動室長に就任した。この時に立ち上げたのが、食品企業の安全マネジメントを第三者が認証する、日本発の民間認証の仕組み。国際取引の拡大や規制強化などで業界が大きく変わるなか、16年に「食品安全マネジメント協会」(JFSM)を設立し、食の安全と信頼性を保つプログラムを実現させた。衛生管理や不祥事への対応がますます重要視される昨今、先見の明を感じさせる取り組みだ。ところが、当時は反対意見も多かった。

「うまくいくわけがない」「コストがかかる」「必要性がわからない」

当時、NHKの連続テレビ小説「あさが来た」で、数々の事業を興し日本初の女子大を設立した女性実業家の人生が描かれていた。毎朝ドラマを見ながら、自身の姿を重ね合わせていたという。「資金の確保や制度の策定に向けて民間企業約60社を訪ねたのですが、けちょんけちょんに言われることもあって。でも、20年後、30年後の食品業界を考えると、やっぱり今やっておかないといけないんじゃないかと思ったんですよね」

前例のない新たな挑戦で、とてもひとりで成し遂げることはできない。チームでの取り組みを大事にしつつも、最終的には自分の判断が肝心だと考え、思ったことは直感的に伝えてきた。ところがある時、部下から“逆襲”を受ける。

「そういうふうに言っちゃダメですって、きつめに注意を受けたんです。その時に、みんなリーダーの言動をすごく見ているんだなと実感して。どのように伝わるのか、慎重に考えないといけないと思いました」

特に省庁は、各部署から人が集まってチームを組むことが多い。円滑なコミュニケーションは、あらゆるプロジェクトの基盤となる。県知事に就任後も心がけてきたという横田は、「みなさんの評価はいろいろあるかと……どうですか?」と、取材に同席した職員たちを笑わせた。そのうちのひとりは、「(一方的に話をするのではなく)職員の話をたくさん聞いてくださるので、こちらもちゃんと伝えなきゃという意識でいます。現場を大切にする方だと感じます」と、実感を述べた。

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文=小山美砂 写真=鷲崎浩太朗

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