リーダーシップ

2026.06.15 15:30

サイバーエージェント山内隆裕が語る AI時代に埋没する「突き抜けた個性」とは

山内隆裕|サイバーエージェント代表取締役社長

山内隆裕|サイバーエージェント代表取締役社長

サイバーエージェントのカリスマ創業者・藤田晋がバトンを託した新社長の山内隆裕。昨年ABEMA開始以降初のメディア&IP事業の黒字化を達成した同社は、個性を組織の力に変え成長曲線を描く。

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2025年12月、日本のインターネット産業を牽引してきたサイバーエージェントに、歴史的な転換点が訪れた。創業者・藤田晋が代表取締役会長へと退き、新社長に抜擢されたのは、新卒入社から20年を迎えた山内隆裕だ。就任から3カ月。「意思決定の最後に自分がいるという比類なきプレッシャー」を突破する武器は、20代の「修羅場」で培った独自の生存哲学にある。

AIを競争力とするサイバーエージェントだが、山内が危惧するのは、突出した個性の埋没だ。「AIを使って優秀な回答をする人は増えましたが、『理屈は通じないが、突き抜けてすごい』という個性が減っているようにも感じます。新たな価値を生むのはいつだって個性の力です」。

山内自身がサイバーエージェントという会社を好きな理由でもある「自由と自己責任」という同社の文化。リスクを負って、自分の個性を失わずに戦い続ける。そして、個性から生まれたアイデアを徹底的にチームで練り上げて「集団の知能」へと磨き上げる。この文化こそが、同社の真の競争優位性だ。AIを使いこなすのが当たり前となった時代だからこそ、かつてないほどの希少価値をもつ。そうした文化のなかで育まれた山内自身も、まさにAI時代にふさわしいリーダーだ。

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「元々は大きい仕事を成したいという漠然とした思いしかなかった」

そう振り返る山内の個性が発揮されたのは、2009年、25歳で子会社CyberZの社長に就任したとき。モバイルマーケティング事業の新会社を立ち上げるにあたって藤田から役員を打診された際、山内は「やるなら自分が社長をやりたい」と直訴したという。

「3人で始めて資本金は1500万円。赤字と黒字を繰り返し、半年間何も成果が出なければ潰れる。そんな極限状態も経験しました」

この時、山内の根底に刻まれたのは「死なない(潰さない)」という経営における切実な生存本能だった。死なないために一番になる。そのために最重要となるのは「市場の見極め」だ。そこで山内が徹底しているのが「抽象的なイメージ」と「具体的な事実」の往復。モバイル広告事業でガラケーからスマホゲームへの業態転換という経営判断ができたのも、まだガラケーが優勢だった時からiPhoneを触り倒したから。「これは世界を変える」という直感を得る一方で、メーカー担当者などへのヒアリングを泥臭く積み上げた。

「未来への確信を外さないためには、点と点を結ぶ作業が必要です。抽象的なビジョンは自分の感覚で膨らませますが、具体的な部分は『一次情報をもつ当事者』に直接会いに行く。これは今も変わりません」

こうしてCyberZではキャッシュアウト寸前の苦境下に、当時主力だったガラケー広告をすべて切り捨てるという非連続な決断を下す。当然、社内からは強い反発が予想された。

「言葉だけで伝えても、人は動かない。だから数カ月前から内密にスマホ広告の営業を進め、具体的な成果を積み上げました。これだけ売れる兆しがある、という『明るい未来の証明』を先につくってから、社内にアナウンスしました」

この読みは当たり、スマホ広告シェアは国内でトップレベルとなった。チャンスを掴むには「準備」が不可欠なのだと山内は強調する。組織を訓練し続け、チャンスが来た瞬間に即GOできる状態を保つ。まさに「自由と自己責任」の文化である。

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文=宮本恵理子 写真=ヤン・ブース

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