トップリーダーたちは「器が大きい」と評される人が多いが、この「器」こそがAI時代に必要なスキルではないか。日本オリンピック委員会(JOC)で全競技の指導者育成を手がける中竹竜二が、「器」の磨き方を解説する。
「人の器」は大きくすることができるのか……答えはYESです。ただし、大きくしようとして大きくなるものではなく、磨き続けた先に自然と育っていくものだと私は考えています。
では、そもそも「人の器」の定義とは何でしょうか。これまでは曖昧でしたが、私は近著『「人の器」の磨き方』(加藤洋平氏と共著)でカート・フィッシャーの「ダイナミックスキル理論」の考え方を取り入れ、「発達のなかで高まっていく多視点的・抽象的なスキルであり、状況に応じて変化する柔軟な構造」と定義しました。同書ではほかに2つの成人発達理論を使って、発達段階を上げることで「人の器」を磨こうと提言しています。
AI時代に突入したことで、リーダーの「器」はますます重要になっています。リーダーはこれまで、正解を提示して仲間を導く存在であることが求められてきましたが、VUCAやBANIという言葉が示すように正解がないことが当たり前になり、あったとしてもひとつではなくなった。「答え」そのものよりもむしろ「過程をどう意味付けしていくか」や、「いかに他者や世界と向き合うか」のほうが大事になっているのです。AIには解決できない「答えのない問い」に向き合うためにも、急いで結論を出さずにじっくりと物事を読み解く力を養うことが求められています。
そこで、リーダーが器を磨き、発達段階を上げていくには、「いかに深く、構造的に、複眼的に考えられるか」がカギになります。スキルや知識を増やすことではなく、悪い状況でも打開する光の側面を発見し、逆に良いと思われる状況でも危険な部分に気づけること。言い換えれば物事をメタ認知できるようになることなのです。
では、リーダーがメタ認知を身に付けて活用していくためにはどうすればいいのでしょうか。その手段は3つ。ひとつが、自分の経験を振り返る「リフレクション」。我々は現在や未来の「自分の器」の大きさがわかりません。わかっているのは過去だけ。例えば過去に、部下の失敗にいきどおった出来事があったとします。それを落ち着いて振り返ることで、「自分の指示やサポートが悪かったのかもしれない」と考え、部下を自分の“支援者”ととらえることもできるようになる。このように、過去の挫折や失敗を含めた「経験」を、多様な視点でとらえ直し続けることが大切です。



