――MATSUYAMA STUDIOは、リサーチチームの存在も特徴のひとつですね。どのような活動をしているのでしょう。
リサーチチームは、「どうやったらスタッフと感覚を深く共有できるか」という課題から立ち上がりました。リサーチを担うスタッフには、作品の発想の起点となるような歴史的レファレンスからサブカルチャーまで、さまざまな資料を調べてレポートをまとめてもらっています。
そうするとリサーチャーは僕が投げかけたアイデアをより深く理解してくれるので、一緒に議論をしながらアイデアを掘り下げたり拡大したりしていくことができるようになります。
たとえばジャック=ルイ・ダヴィッドを引用して絵を描くとして、そこに異なる文脈の要素を接続することで、作品はより複層的な広がりを持ち、伝えうるメッセージも広がっていきます。
美術とはお金を超えた価値を持つもの
――タイムズスクエアでの作品上映を経て、今後のビジョンは?
今回の「Times Square Arts Midnight Moment」もそうですが、いま僕はパブリック・アートに数多く取り組んでいます。
ニューヨークに来たばかりで作品発表の場がなかったころ、ブルックリンで15メートルほどの壁画を描かせてもらい、それが初めて雑誌に取り上げられて、ナイキから仕事のオファーがきました。
その時に、作品を売ることだけを真正面から考えるのではなくて、自分が動いたことの結果がいろいろなところに伝搬していき、対価として戻ってくるのだと実感しました。いまパブリック・アートに取り組むのは、この原体験に立ち返ろうと思ったことと、ウォルト・ディズニーのように社会に新しい価値を生み出したいという思いがあるからです。
2020年には、日本初の巨大パブリック・アートである「花尾」を制作し、新宿東口駅前広場に設置されました。この作品は、海外から新宿を見た時の新宿らしさ―それは東京らしさでもあり日本らしさでもあるのですが―それを引き出したいと考えて制作しました。
結果的に国内外のメディアが取り上げ世界的な認知へ広がっていきました。そこから世界各国で大規模なプロジェクトに発展し、今回のプロジェクトにも繋がりました。
タイムズスクエアに広告を出そうと思うと巨額になりますが、僕は対価を払うことなく夢と情熱を原動力に実現することができました。美術とは、お金という概念を超えた価値を持つものだと思っています。それをどこまで意識できるのかが、芸術家の本分だと思っています。お金にとらわれることなく意思決定のスケールを大きくしていくアーティストが、ウォルト・ディズニーもですが、本質的な芸術家だと思うんです。
僕は世界に届く表現をやっていきたい。温暖化や戦争で、これからますます不透明な時代になっていくでしょう。そういう中で、少しでも明日に希望が持てるようなメッセージを届けていきたいです。


