アート

2026.06.02 15:15

「芸術家は発明家であれ」現代美術家・松山智一の成功戦略

Photo: FUMIHIKO SUGINO

実は僕は、ウォルト・ディズニーが好きなんです。彼はアニメ作家でありながら起業家でもありますよね。無声映画が主流だった1928年に初めて映像と音が完全にシンクロした白黒のアニメーション映画『蒸気船ウィリー(Steamboat Willie)』を発表した彼は、1937年には世界初のカラー長編アニメ『白雪姫』をつくりました。こうした発明によって、それまでハリウッド映画の前座にすぎなかったアニメ―ション映画の芸術性を証明しました。

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映画界で次々と革命を起こした彼は、テーマパーク「ディズニーランド」を構想します。アトラクションや施設を設計・開発する技術集団「イマジニアリング」を結成し、構想からわずか1年、1955年にカリフォルニアにディズニーランドをオープンさせました。

彼は次々と新しいものを発明していきましたが、経営者としての戦略設計にも長けていました。特にディズニーランド開業時の資金調達や集客の仕方はユニークで。巨額の建設費に私財を投げうったディズニーは、不足分の資金を調達するためにABCテレビと提携しました。テレビ番組『ディズニーランド』を放送した結果、番組は大ヒットしディズニーランドのオープン時には多くの来場者が集まったそうです。

彼はアニメ作家ですが、画家も彼のような発明家でなければいけないと思っています。ルネサンス時代の画家を見ても、レオナルド・ダ・ヴィンチは人体図を描き、日用品の発明から武器の設計までを手掛けていましたし、ラファエロは画家から始まって晩年はサン・ピエトロ大聖堂の主任建築家を任されるなどローマで建築家として活躍しました。世の中を切り拓く人というのは、やっぱり発明家なんですよ。

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「哲学」を共有するバリューブック

――約30人のスタッフと作品制作をされていますが、松山智一作品のクオリティを担保するために工夫していることは。

重要なのは僕の哲学をスタッフと共有することです。それを本格的に導入するきっかけになったのは、コロナ禍でした。多くのスタッフが日本に帰国してしまいコアメンバーだけが残ったときに、中小企業の経営者向けの本に出会いました。そこに書かれていた「よくあるミス」がまさに自分に当てはまると感じて、著者の経営コンサルタントの方に連絡をして組織づくりを見直しました。

その時につくったのが、コーポレートバリューブックです。これを社員全員に配り、目指すべきゴールを共有しています。定着させるために、毎朝9時から行っている朝礼で、社員にはバリューを体現するような経験や話題を数分話してもらうようにもしています。最後は必ず僕が話をします。

これには、哲学を共有して視座を高めるだけでなく、プレゼン能力や言語能力を鍛えるという狙いもあります。米国で活動していくとなると、作家本人が作品を説明できないといけないので言語化は重要なのです。また、他のメンバーの話を聞くことで、自分とは異なる考え方があることを知り、話している人の背景が見えてきますよね。結果、相互理解度があがりチームの結束力も強くなるんです。

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文=久野照美

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