現代美術家の松山智一は4月の1カ月間、米ニューヨークのタイムズスクエアでデジタル・パブリックアートプログラム「Times Square Arts Midnight Moment」に参加。毎晩23時57分から24時までの3分間、タイムズスクエア一帯の96面以上のデジタルディスプレイが同期し、映像作品「Morning Again」を届けた。
日本人アーティストとしてタイムズスクエアを彩る快挙を成し遂げた松山は、2002年に単身で渡米後自らキャリアを切り拓いてきた。日本の浮世絵など伝統的な芸術と米国の大衆文化をミックスさせたスタイルで現代社会を表現した作品が多く、2019年にキース・ヘリングやバンクシーも描いたストリートアートの聖地「バワリーミューラル」に壁画を描いたことでも注目された。
その後も絵画を中心に彫刻やインスタレーション作品などを発表してニューヨークの過酷なマーケットで評価を積み上げ、世界各地のギャラリー、美術館、国際芸術祭などで展覧会を多数開催してきた。日本でも2025年に麻布台ヒルズ ギャラリーで大規模個展「松山智一展 FIRST LAST」を成功させるなど、人気を集めている。
そんな松山が力を入れているのが、持続可能な組織づくり。ブルックリンに「MATSUYAMA STUDIO」を構え、2013年から経営者としてスタジオを運営している。日本人の若手アーティスト約30人を制作スタッフとして正社員で雇用していたり、作品制作のためのリサーチチームも抱えていたりと、独自のビジネスモデルでアート業界に風穴を開けてきた。
「時々経営者の方に『起業家みたいですね』と言われることがあるけれど、僕が起業家なんじゃなくて、起業家がアーティストみたいなんだと思う」と笑う松山は、クリエイティブファーストを保ちつつアントレプレナーシップを発揮するバランス感覚の持ち主だ。
そんな松山に、試行錯誤してきた組織づくりについて聞いた。
――2013年から「MATSUYAMA STUDIO」を経営しています。若手アーティストを正社員として雇い、育成していくモデルを採用しているのはなぜですか。
「MATSUYAMA STUDIO」は、僕自身の限界をチームの力によって拡張していく場なんです。僕一人の発想だけではなく、チームが生み出す多様な視点やアイデアの方が、結果としてより強度のある作品に繋がると考えています。
とは言え、ただやみくもに数の力を使うわけではありません。若いアーティストを正社員として採用しているのは、業界全体に質の高い人材を生み出すためでもあります。安定して働きながら学べる環境を整え、将来的に独立できるようサポートしているのです。
彼らは制作やデザインチームの一員であるだけでなく、勤務時間外や週末にはスタジオを使って自由に彼ら自身の創作活動をしています。さらに、彼らの作品を発表する展覧会を企画・開催し、メディアにも積極的に発信しています。その結果、5〜6年もたつと美術家として独立していく人も出てきます。
こうしたモデルを採用しているのは、「MATSUYAMA STUDIOに入れば米国でもアーティストへの道が開ける」という環境をつくりたかったから。今では優れた人材が集まり、育ち、巣立っていく良いサイクルが生まれていて、スタジオにも体力がついてきました。



