ロサンゼルスの新興企業Arcは当初、高級電動ボートの販売から事業を始めた。だが、イラン紛争で燃料費が重くのしかかる今、より大きなビジネスを追っている。バッテリー駆動のタグボート、バージ(はしけ)、軍用艇だ。
次の主役EVは? 「電動タグボート」の可能性を探る
次に注目される「電気自動車」(EV)は、ガルウィングドアも自動運転モードも、自宅に非常用電源を供給する機能も備えていないかもしれない。それは、全長約24メートル(約80フィート)で、ほぼ4階建ての高さがあり、ロングビーチ港で巨大な貨物船を引き回すために造られたタグボートという可能性もある。
ロサンゼルスの新興企業、Arcが賭けているのはそこだ。同社は、ソフトウェアエンジニアのミッチ・リーと、元スペースXのロケット設計者ライアン・クックが共同創業した。富裕層の週末利用者に向けて、洗練され高速な30万ドル(約4800万円。1ドル=160円換算)の電動ボートを販売し、高級水上レジャー市場を狙って電動ボート事業を立ち上げた。
だが現在、原油価格が歴史的高水準にある中、2000万ドル(約32億円)のバッテリー駆動タグボートを投入し、コンテナ港へ巨大な貨物船を引き込める製品で商用船舶分野に踏み込んでいる。磨き上げられたレジャーの玩具から、過酷な稼働条件、巨額の燃料費、そして規制当局の圧力を伴う産業機械へ。機を捉えた、時宜を得た転換である。
256億円の契約で世界初の電動タグボートが就航へ
シアトル近郊の造船所で建造中のArc初の商用船は、すでに概念実証(PoC)へ向かっている。2025年末に発表された1億6000万ドル(約256億円)規模の契約のもと、その技術はロングビーチ港で就航予定という世界初の電動タグボートに採用されている。Arcと初期顧客であるカーティン・マリタイムが期待する水準の性能を発揮すれば、同社は電動フェリー、バージ(はしけ)、さらには軍用艇へと展開を広げる考えだと、CTOのクックはForbesに語った。
「今後10〜15年で、海運のあらゆるセグメントが主として電動化していくというのが、我々の強い仮説だ」と彼は言う。「それはディーゼル電気のようなハイブリッド電気が主流になることを意味するかもしれない。しかし事実として、電気は重い荷物を動かす上で、はるかに効率的で費用対効果も高い。鉄道業界ではすでに起きた。現在は海運業界で起きている」。



