ロシアの違法な主張を支援する中国の思惑
中国は、ロシアの違法な主張を支援している。両国は北極圏での軍事的存在感を拡大するために連携を深めている。2024年9月、中国の砕氷船が北極海航路の航行に成功した。ロシアは翌年、中国の船員に対し、極地環境下での操船訓練を実施していることを明らかにし、両国は「極地シルクロード」構想での協力に合意した。これは米国に対する中露の軍事協力の誇示という側面だけにとどまらない。中国がロシアの北極海航路に対する領有権主張を支持する見返りとして得られるのは、同航路の優先的な利用権と、同航路を通じて輸送される制裁対象の石油や液化天然ガス(LNG)だ。
中国は今後もロシアの北極圏における戦略目標を支援し続ける可能性が高い。中国は制裁を回避し、エネルギー安全保障を推進するために北極海航路を必要としているからだ。その見返りとして、同国はロシアに対し、外交的支援や北極海航路の基盤整備への経済投資のほか、軍事支援を提供している。北極海航路に海底ケーブルが敷設される可能性があることを踏まえると、ロシアによる同航路の支配は、中露のサイバー主権の追求も後押しすることになる。これは自由で開かれたインターネットを脅かすことになる。
ロシアの北極海航路支配を左右するホルムズ海峡の動向
イランにホルムズ海峡の主権を認めることは、北極圏におけるロシアの行動を後押しすることになる。イランは、ロシアが北極海航路で長年試みてきたことをわずか数カ月で成し遂げた。イランはホルムズ海峡の支配を宣言し、通過する船舶を選別し、厳格な規制と通行料を課す一方で、友好国には優先的な通行を許可している。イランの事例により、ロシアは、北極海航路に対する主権を主張するために軍事力を行使すれば、米国や欧州との交渉で強力な切り札となることを認識している。ロシアと中国が国連安保理の拒否権を持っているため、ロシアの北極圏における野望を阻止するための武力行使を安保理が承認することは決してないだろう。
米国は、北極海航路に対するロシアの主張に抗議することで、国際的な航行の自由の促進に向けた取り組みを継続すべきだ。米政府は1963年以来、ロシアの主張に対して外交的に抗議してきた。これはロシアの主張が国際法の下で確定しないようにするために必要な措置だ。外交努力を強化し、北大西洋条約機構(NATO)加盟国と連携することで、ロシアへの圧力を強めることができるだろう。ロシアの国内法が事実上の国際的な規則となるのを防ぐため、米国は国際海事機関(IMO)を通じて国際的な航行基準の策定を推進することもできる。こうした取り組みは、北極海航路の商業的価値が高まり、利害関係の対立が生じる前に実施されなければならない。米国が北極海航路の航行の自由に向けた努力を推進すれば、ロシアへの圧力となり、米国が北極海を自由かつ開放的な状態に保つことに真剣に取り組んでいることを示すことになる。
世界がホルムズ海峡の動向を注視している間に、ロシアは北方を見据えている。イランがホルムズ海峡の主権を法的にも事実上でも持たないようにすることは、北極海航路をはじめとする世界の主要航路にとって極めて重要な前例となるだろう。NATOの北側での危機を回避するためには、米国とその同盟国は、氷が溶ける前にロシアの北極海航路に対する領有権主張に異議を申し立てなければならない。


