政治

2026.06.02 07:00

ホルムズ海峡の支配権をイランに譲れば、北極圏はロシアのものに

ロシア北西部ムルマンスクで、北極海で30年以上にわたり活躍した後、博物館へと改装された世界初の原子力砕氷船「レーニン」号。2025年8月2日撮影(Emre Gurkan Abay/Anadolu via Getty Images)

ロシア北西部ムルマンスクで、北極海で30年以上にわたり活躍した後、博物館へと改装された世界初の原子力砕氷船「レーニン」号。2025年8月2日撮影(Emre Gurkan Abay/Anadolu via Getty Images)

米国による封鎖と数週間にわたる交渉にもかかわらず、イランは依然としてホルムズ海峡の主権を主張している。ロシアと中国はこの動向を注視している。米国がホルムズ海峡を封鎖する以前、イランはロシアと中国の船舶に同海峡の優先的な航行を認めていた一方で、一部の船舶には200万ドル(約3億円)の通行料を課し、それ以外の船舶の通行を完全に遮断していた。自国の利益を守るため、ロシアと中国は4月、同海峡の再開を求める国連安全保障理事会の決議に拒否権を行使した。

だが、この拒否権行使はホルムズ海峡だけの問題ではなかった。ロシアと中国は同海峡から8000キロ北にある、より大きな獲物を狙っているのだ。イランにホルムズ海峡の主権を認めることは、恐らく読者が聞いたこともないであろう最も重要な海上航路である「北極海航路」を巡り、ロシアが武力によって主権を主張する道を開くことになる。ロシアに北極海航路の支配を許すことは、米国の国家安全保障上の利益だけでなく、世界中の貿易や航行の自由を脅かすことになるだろう。

北極海航路は北極圏を貫き、東のベーリング海峡と西のバレンツ海を結んでいる。年間を通してほとんどの期間は航行不能だが、温暖化による氷の融解により航行可能になりつつあり、アジアと欧州の市場を結ぶ重要な航路となっている。海運各社は危険なスエズ運河に代わる選択肢として、この北極海航路に注目している。同航路はスエズ運河より約5600キロ短く、航行日数を10~15日短縮することができる。他方で、スエズ運河より水深が浅いため、すべての大型貨物船が利用できるわけではない。一方、北極海航路は現代のデジタル商取引の多くを担う海底ケーブルの新たな敷設ルートとなる可能性もある。海底ケーブルは小型船で敷設できるため、同航路は経済発展を促すことが期待されている。

北極海航路を支配するロシア

ロシアは戦略的または軍事的利益を得るために意図的に法律を悪用する「ローフェア」を展開し、北極海航路に対する支配を強めている。同国は国連海洋法条約を不当に解釈し、北極海航路の大部分を自国の領海であると主張している。ロシアはこの主張を国内法に明文化し、許可のない外国船舶の航行を違法と見なす法的根拠を築いている。

イランがホルムズ海峡で行っているように、ロシアは既に北極海航路を通過する船舶に対して違法な通行料や制限を課している。同航路を通過する船舶はロシアに通行料を支払い、厳しい汚染規制や保険要件を順守しなければならない。同国は北極海航路を航行する外国の民間船舶に対し、ロシアの砕氷船による護衛を義務付けている。こうして、ロシアは事実上、北極海航路を利用できる船舶を選別しているのだ。ロシアの2022年軍艦法は、外国軍艦が同航路を通過する際に90日前の事前通知を義務付けるとともに、1度の航行を1隻の軍艦に制限し、潜水艦には浮上を命じている。この法律は国連海洋法条約に明らかに違反している。軍艦法に従えば、ロシアの許可なく北極海航路を航行するいかなる軍艦も、同国の国内法に違反することになる。したがって、外国軍艦による北極海航路の航行は、ロシアとの武力衝突の危険を伴うことになる。

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翻訳・編集=安藤清香

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