生成AIのClaudeを生んだアンソロピック(Anthropic)は、米証券取引委員会(SEC)に非公開の上場申請書類を提出したと発表した。早ければ2026年後半の実施とも噂される新規株式公開(IPO)に向けて一歩を踏み出した形だ。
この申請書類の段階では、発行株式数も公開価格も設定されていない。
このわずか数日前には、同社は評価額9650億ドル(約153.44兆円。1ドル=159円換算)で650億ドル(約10.34兆円)を調達している。この資金調達ラウンドにより、同社はライバルのOpenAIを評価額で追い抜き、AI業界で最も価値のあるスタートアップとしての地位を確立した。アンソロピックの評価額はおよそ3カ月前の3800億ドル(約60.42兆円)からほぼ3倍に跳ね上がっている。
アンソロピックの年換算売上高は5月に470億ドル(約7.47兆円)を突破し、年初の300億ドル(約4.77兆円)、さらには昨年の100億ドル(約1.59兆円)から急増した。
米国のIPO市場は活況だ。これまでに誕生した非公開企業の中で最も価値のある3社が、同時期に公開市場へと殺到しようとしているためである。そしてこの市場において最も注目を集めるのが、生成AI時代を定義づけ、今やどちらが先に上場の鐘を鳴らすかを競い合う2つの企業、アンソロピックとOpenAIである。
ChatGPTでAIブームに火をつけたOpenAIは、3月に8520億ドル(約135.47兆円)の評価額で1220億ドル(約19.4兆円)を調達したものの、売上目標の未達やイーロン・マスクとの法廷闘争を背景に投資家の間では不安の声もあがる。これに対してアンソロピックは、旺盛な法人需要とClaude Codeシリーズによって急成長を遂げ、評価額の面でOpenAIを初めて上回った。
また、今年はじめにxAIと合併したスペースXの上場手続きは最も進んでおり、公開での申請書類提出とロードショー(投資家向け説明会)が6月上旬にも始まると報じられている。同社は約1兆8000億ドル(約286.2兆円)の評価額を目標に掲げ、750億ドル(約11.93兆円)以上の資金調達を目指している。
これらのAI巨大企業に続き、データブリックス、キャンバ、ストライプ、コヒア、ストラバといった注目企業がIPO予備軍とされるほか、ディスコードやインスパイア・ブランズ(ダンキン、バッファロー・ワイルド・ウィングスなどが傘下)などの企業も控えている。
ウォール街がアンソロピックに魅了されている理由の1つは、一般のユーザーが利用することすらできない、あるモデルの存在だ。同社は4月7日にClaude Mythos(クロード・ミュトス)を発表したものの、それが悪意ある者の手に渡った場合に極めて危険な存在になりかねないというサイバーセキュリティ上の懸念を理由に、一般公開を見送った。
同社はMythosを広く提供する代わりに、「プロジェクト・グラスウィング」と呼ばれる厳格な審査を伴うパートナー限定プログラムを立ち上げ、アップル、マイクロソフト、グーグル、アマゾン・ウェブ・サービス、クラウドストライク、パロアルトネットワークスなどの企業や約40のその他の組織に対し、監視付きのアクセス権を付与した。敵対者が脆弱性を悪用する前に、重要なソフトウェアのセキュリティを堅牢化することがその目的とされている。



