中国の習近平国家主席が近く訪朝するとの観測が出ている。昨年後半から仏独英など欧州主要国の訪中が相次ぎ、5月にはトランプ米大統領、続いてロシアのプーチン大統領も北京を訪れた。各国首脳が北京詣でを繰り広げるなか、なぜ習氏自らが北朝鮮を訪れようというのか。日本と韓国が最も警戒すべきは、7月27日の朝鮮戦争休戦記念日に向け、休戦協定の平和協定へ転換する機運を演出する動きだろう。
習氏は2012年11月に中国共産党総書記に就任する前から北朝鮮の金正恩総書記が嫌いだった。中朝関係筋によれば、習氏は副主席時代、2011年末に最高指導者の座に就いた金正恩氏に核実験を控えるよう促す親書を送った。金正恩氏は働きかけを無視し、13年2月から17年9月にかけて計4回の核実験を行った。習氏は13年3月の国家主席就任後の14年7月、北朝鮮ではなく、先に韓国を訪れた。激怒した正恩氏は北朝鮮内で中国ドラマの放映を禁じるなど、関係が大きく冷え込んだ。
「人間関係としては犬猿の仲」(同筋)の2人が関係を修復したのは、第1次トランプ政権による北朝鮮への接近だった。金正恩氏の最高指導者就任から約6年間も会わなかったのに、18年3月から19年6月までに立て続けに5回も会った。18年6月と19年2月に行われた米朝首脳会談を巡る意見交換が目的だった。同筋によれば、金正恩氏は「どんな状況になっても朝鮮を支持してほしい」と訴えた。これに対し、習氏は「朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に変える場合は、事前に相談してほしい」と伝えたという。
中国は依然、北朝鮮の非核化が望ましいという立場は変えていない。東アジアに「核ドミノ現象」が起きたり、金正恩氏が自らを過大評価して挑発行動に出るリスクが高まったりするからだ。それでも、中国は昨年9月に金正恩氏を北京に招待した時点で、戦略を変えたとみられる。
中国側の発表などによれば、習氏は昨年9月の中朝首脳会談では、過去5回の会談と異なり、「朝鮮半島の非核化」に言及しなかった模様だ。この頃から、新鴨緑江大橋の北朝鮮側施設の工事が活発化した。橋の本体と中国側施設は2014年ごろに完成していたが、北朝鮮側の工事が遅れていた。中国側が資金を提供したのだろう。中国と北朝鮮を結ぶ鉄路や空路の定期便も依然、不安定な運航ながら再開した。日米韓の専門家はこうした動きを「北朝鮮とロシアの急接近にくさびを打ち、中国の裏庭である朝鮮半島での支配力を高めようとする動き」と捉えてきた。



